AERA 2020年8月24日号より
AERA 2020年8月24日号より

 新型コロナウイルス対応と、患者たちの受診控えが医療機関の経営を直撃している。AERAが医師1335人への大規模アンケートや専門家、現場の医師らに取材を行うと、さまざまな課題が見えてきた。AERA 2020年8月24日号から。

【医師1335人緊急アンケート】いま、医療現場で何がおこっているのか?

*  *  *

 新型コロナウイルスの感染拡大で医療機関の状況が変わるなか、行政の指示による混乱もある。

 東京都立川市の立川相互病院は、現在専用病棟の15床で入院患者を受け入れている。さらに、肺炎などの発熱で入院する患者のみを収容する発熱患者観察専用病棟(疑い病棟)を別に置き、常に5人から10人程度の入院患者を受け入れている。感染拡大初期からPCR検査や診療に協力してきたが、コロナ入院患者が減ったため、5月末には臨時に設けていた新型コロナの専門病棟を閉鎖、元の準集中治療室に戻した。

 だが、6月29日、都から7月1日までにコロナ病床の開設を求める要請が届いた。山田秀樹副院長は、「病棟の再改修や看護体制の増員配置、勤務の組み替えなどがあり、病床は簡単には用意できない。なのに、都からは連日、病棟は用意できたかと電話があった」と話す。

 7月6日、専門病棟を再び開設したが、疑念は晴れない。

「7月1日分から、コロナ病床が空いている場合、都が補正予算で補償を出すんです。でも、遅れた日数分は補填料を出さないと、我々の足元を見るような言動もあった」(山田副院長)

 そこまで対応しても、経営は苦しい。感染を恐れた一般患者の受診控えと患者を受け入れる費用で赤字に追い込まれた。4月の収入が予算と比べて9700万円減、5月は1.1億円減だ。新型コロナに対応しているから、「お宅の病院には入院したくない」と言われたこともある。手術や内視鏡検査、検診もなくなり、外来は3割減、手術は5割減だ。

 患者を受け入れるための費用も膨大だ。

「コロナ専用病棟を作り、改修費用などで総額2400万円。専用病棟の清掃、病棟をゾーニングするためのアクリル板の壁の設置、空気清浄機も購入しました」(同)

著者プロフィールを見る
小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

小長光哲郎の記事一覧はこちら
次のページ