「この模擬授業は、教員が、なぜこの研究が必要なのか、高校生にも理解できるように作っています。大学の学びは高校生にはわかりにくいが、模擬授業を体験することで大学生になった自分をイメージできる。いわば、大学の究極の広報ツールです」

 昨年はこの模擬授業を利用して、「Web体験授業型入試」を7学部11学科(夜間部含む)で実施。やり方はこうだ。まず指定された授業を視聴。出された課題について解決法を調べて考察する。試験当日は、試験官と相対し自分の考えを発表する。オンラインのほかに、大学で対面で行うことも選べる。

「地域格差をなくしたかった。地方から上京すると費用もかかり、ホテルに泊まることで精神状態がいつもと違う。オンラインで行うことで公平な入試に近づくことができた」(加藤さん)

 近隣の学生は大学で受けることが多く、北海道の離島や沖縄など、交通の便が悪い地方の受験生がオンラインを利用。今後、緊急事態宣言が出た場合に備え、面接のオンライン化の準備も進めているという。

「オンライン入試は、実はかなり手間がかかります。一人ひとりの応答時間を設定し、事前の接続テストも必要です。ネットワークの不調や機器のトラブルで画面が映らなかったり、音声が聞こえなければやり直さなければならない。本学は外国にいる受験生にオンライン入試を行っておりノウハウがありますが、初めてやる大学は大変だと思います」(同)

 大学も手探りの状態だが、受験生もオンライン入試は初の体験。どんな点に気を付けたらいいのか。東京都市大の小澤さんは、「服装や態度は、基本的に対面式の面接と同じと考えて挑んでほしい」と、アドバイス。自宅にいると気も緩みがちだが、服装はきちんとしておこう。キョロキョロ視線を動かすのも、あらぬ疑いを掛けられることになりかねない。お茶を飲むのもNGだ。本番の状態を設定して家族や友達にテストしてもらい、映像の加減や音声が聞こえているか確認しておこう。

 東洋大の加藤さんは言う。

「(面接やプレゼンは)人物重視という点では就職試験に似ています。どういう経験をしてきて何をしたいのか。そのまま大学入試にもあてはまるのではないでしょうか」

 新型コロナの影響で、大学入試は学科から総合型、推薦型への移行が早まりそうだ。(ライター・柿崎明子)

AERA 2020年8月3日号