新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が7都府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県)に発出されて3日が経った。期間は5月6日までの1カ月間。10日午後には、愛知県も独自の緊急事態宣言を出した。各都府県の知事が住民の外出自粛要請などの措置をとる。ただ強制力はなく、あくまで「要請」となる。
そんな中、以前から外出を控える要請の必要性を強く提唱していたのが、神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎教授だ。記憶にも新しいクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」内の感染対策をYouTubeで配信したことがきっかけで、新型コロナウイルスに対しての世間の目と意識は大きく変わった。その後もツイッターなどのSNSを通じて、あえて「ロックダウン」の言葉を用いて喫緊の規制を求めてきた。
週刊誌「AERA」では4月3日(金)、岩田医師と本誌コラムニストで思想家の内田樹氏との緊急対談を行った。聞き役にまわった内田氏は水際での対応や東京五輪への影響などさまざまテーマを岩田医師に投げかけた。ここでは、その対談の一部として「外出を制限すること」の意義について論じる。
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内田樹:2月に、岩田先生がクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の状況をYouTubeで世界に向けて発信されたのを見て、大きな衝撃を受けた次第です。以来、新型コロナの問題は私たちの生活のあらゆる側面に影響を及ぼしています。岩田先生は感染拡大を防ぐために外出を制限するロックダウンのような規制が必要と言われていますが、医師の視点からどういうことなのでしょうか。
岩田健太郎:まず、ロックダウンには二つの意味があると、私は考えています。一つはエリアの内外の出入りを原則禁ずること。もう一つは、中にいる人が外に出ないことで、「ステイ・ホーム」のことです。その二つが骨子になります。ただし、運用にあたっては濃淡があります。いまイギリス、アメリカ、スペインなど、ロックダウンしているたくさんの国がありますが、その内容についてはさまざまです。食料品を買うのは全面OKな国もあれば、外出に時間制限を設けている国もあります。最近イタリアでは、子どもたちが外出するのを認めました。フランスのパリでは散歩もOKにしています(その後この方針を転換したとの報道もあり。4月8日時点)。鉄道やバスも完全にストップするのではなく、警察官や救急隊員医療従事者は通勤できるようにするなど、運用の仕方はさまざまです。