「何でこうなっちゃったのだろう」「このままではいけない」「何かやれることはあるかなあ」……。だが、いくら考えても答えは出ない。悲しくなって、泣いた。女性は言う。

「『あなたは何をしていますか』と聞かれた時に、『私には写真があります』と説明できていたものが、なくなった。親にも迷惑をかけ、自分の芯がなくなり、この世にいても意味はないと思いました」

「ひきこもり」は国の定義では、コンビニなどに行くことはあるものの仕事や学校に行かず、半年以上家にいる状態が続くことをいう。当事者団体では、そうした「状態」ではなく、生きづらさや苦しさがあり、自らをひきこもりと「自認」する人を指す。

 長い間、「ひきこもり」と言えば「男性」というイメージが強かった。だが、ひきこもりの経験者らでつくる「ひきこもりUX会議」代表理事の林恭子さん(53)はこう話す。

「女性のひきこもりの存在は、可視化されていなかっただけ。かつて国などの調査では、自宅で家事育児をしている女性は除外されてきた。ひきこもる多くの女性は統計から消され、『見えない存在』とされていたのです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2020年4月6日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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