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福岡伸一「理論的だが、コロナウイルス問題を2週間で解決する方法」

連載「福岡伸一の新・生命探検」

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新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (c)朝日新聞社

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真 (c)朝日新聞社

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

 メディアに現れる生物科学用語を生物学者の福岡伸一が毎回一つ取り上げ、その意味や背景を解説していきます。前回に引き続き、今回も猛威を振るう新型コロナウイルスについて取り上げます。

【写真】解説する福岡伸一さん

*  *  *
 治療薬もワクチンも集団免疫も待たずに、2週間でコロナウイルス問題を解決する方法が「理論的」にはある。

1.世界人口70億人。およそ20億家族がいると仮定する。

2.各家族に、2週間分の食料と水を与え、その間、完全完璧な隔離をする(各家族の間のあらゆる接近を一切遮断してもらう)。

3.2週間待つ。

 この結果、何が起きるか。

 人間の体内では、ウイルスと免疫系の戦いは2週間以内に決着がつく(とされる)。それゆえ、

1.家族内に感染者がいない場合、何も起きない。2週間後もその家族は健在で、その後、ウイルスを伝播する心配もない。

2.家族内に感染者がいる場合、家族内で伝播・発症が起き、各体内で2週間のウイルスvs免疫系の戦いがおきる。多くの場合、免疫系がウイルスに打ち勝ち、体内のウイルスは分解除去される。不幸なケースでは、ウイルスが勝ち、宿主が亡くなる場合。結果として体内のウイルスも増殖できなくなる。この場合も、2週間後には家族内にウイルスはいなくなる。

3.結果として、2週間後、世界から(少なくとも人間から)ウイルスは駆逐される。

 これは、知人の数理学者と会話しているとき(もちろん遠隔的会話)に出てきたアイデア。もちろん純粋に理論的な思考実験である。現実的にすぐ実行に移せるわけではないことをご理解いただきたい。しかも、このモデルは「完全隔離」が旨なので、発症者が病院に行くことは考慮にいれていない。

 20億家族のうち、0.1%にウイルスがいて、それが家族のもう一人にうつるとすれば、400万人が感染。このうちどれくらいが発症するかわからないが、半数が発症し、致死率が1~2%だとすると2~4万人がこの完全隔離作戦の犠牲になってしまうことになる(これは現時点での世界死亡者数に近い)。もうひとつの盲点は、たとえ免疫系が勝っても、体内にウイルスが潜伏している人がいる可能性もあるということ。

 つまり、ウイルスとの戦いは、それくらい困難を伴うものでもある。適切な隔離政策で広がりを抑えつつ、長期的にはインフルエンザのように共存していくことを選ぶしかない。

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福岡伸一

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。

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