多くの企業がウイルス対策としてテレワークを活用している。東京五輪期間の混雑緩和に向け、政府が推進してきたテレワークが奏功した形だ (c)朝日新聞社
多くの企業がウイルス対策としてテレワークを活用している。東京五輪期間の混雑緩和に向け、政府が推進してきたテレワークが奏功した形だ (c)朝日新聞社

 従業員への感染を防ごうと、多くの企業がテレワークの導入を打ち出した。だが派遣社員は制度を使えないなど、現場では混乱も起きている。AERA2020年3月9日号は、テレワーク導入現場で生じている新たな問題に迫る。

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 感染が拡大している新型コロナウイルスから身を守るため、社員の在宅勤務を進める会社が増えている。東京五輪期間中の混雑回避などのため政府がここ数年旗を振ってきた「テレワーク」が奏功している形だが、すべてが解決するわけではない。

 都内のイベントプロダクション会社の男性(20代)は「『痛勤』がなくなった」と安堵している。出勤に使う地下鉄は、いつも満員だった。

「すし詰め状態で、マスクをしていない人もいるし、いつ感染するかって怖かった。それがなくなっただけでも、本当によかったと心の底から思う」

 自宅で働くが、業務内容はオフィスで働いていたときと特に変わらない。会議はオンライン、同僚との会話は社内SNSが中心となった。

 NTTグループ、NEC、楽天など多くの企業が、1月末頃から2月にかけて、在宅での勤務の義務付けや推奨を始めた。社員の多くは出社せず、パソコンや仕事道具を自宅に持ち帰って働いている。テレワークを始めた都内のイベント制作会社の男性(32)は「会社から、期限がいつまでか伝えられていません。今までになく長期で、本格的です」と話す。

 だが同じ社内でも、雇用形態によって、テレワークができないケースがある。

 都内の外資系企業に勤める派遣社員の女性(40代)は2月初旬、CEOから全社員に一斉送信された一通の社内メールを開き、声を失った。

「新型コロナウイルスへの感染を予防するために、テレワークやフレックスを積極的に導入しましょう」

 メールは正社員を対象としており派遣社員には触れられていない。「慣例として派遣はテレワークを認められていません。少数派である派遣の存在が黙殺されていると感じます」(女性)

 なぜ在宅で勤務できないのか、派遣元に確認するが、「テレワークできない契約事項はないが、会社の指示に従って」と言われるだけで埒が明かない。

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