(左上から時計回り)下船が始まったダイヤモンド・プリンセス号(19日)/国立感染症研究所で分離された新型コロナウイルス/天皇誕生日の一般参賀は中止に(23日)/休日の横浜赤レンガ倉庫周辺も観光客は少なめ(2月24日)/日経平均株価は一時千円超の下げ幅(25日)/対策本部で発言する安倍首相(26日)/「国は一歩踏み込んだ対応を」と求めた福田富一・栃木県知事(22日) (c)朝日新聞社
(左上から時計回り)下船が始まったダイヤモンド・プリンセス号(19日)/国立感染症研究所で分離された新型コロナウイルス/天皇誕生日の一般参賀は中止に(23日)/休日の横浜赤レンガ倉庫周辺も観光客は少なめ(2月24日)/日経平均株価は一時千円超の下げ幅(25日)/対策本部で発言する安倍首相(26日)/「国は一歩踏み込んだ対応を」と求めた福田富一・栃木県知事(22日) (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスによる感染が、世界各地で急速に広がっている。専門家は「ここ1~2週間が瀬戸際」と言い、日常生活にも支障が出始めている。国内での爆発的な拡大を何とかして抑えこまなければならない。AERA2020年3月9日号は、「新型ウイルスの実像」を特集。見えてきた正体に迫る。

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「今回のウイルスは、まさに、手ごわい相手だ」

 政府の対策専門家会議の副座長を務める尾身茂・地域医療機能推進機構理事長は、記者会見で新型コロナウイルスについて、こう評した。

 感染させた人をことごとく重い病気に陥らせる──という意味ではない。むしろ、その逆に近い。

 感染しても、症状が出るとは限らない。せきやくしゃみがなくても、感染が起きたと疑われるケースも出ている。知らないうちに忍び寄り、気付いた時にはもう別の人にとりついている。新型コロナウイルスはそのようにして、宿主の人間を次々に増やしているとみられている。

 尾身さんはこうも言う。

「『これをすれば絶対に感染を防げる』。そんな幻想にもとづく対策は必ず破綻(はたん)する。極めて厳しい闘いだ」

 中国・武漢市を起点としたウイルスは、日本を含むアジア、欧米、アフリカなど約40カ国に広がり、世界で8万人以上が感染した。死者は3千人に迫る勢いだ。韓国やイタリアなどでは、感染の広がりが速度を増しているとも伝えられている。

 新型コロナウイルスはどれだけの感染力を持ち、どれくらいの病原性を持つのか。その正体は、まだよくわかっていない。ただ、中国でのこれまでの統計や治療経過にかかわる情報を中心に、その姿は少しずつ見えてきている。

 最近のまとまったデータとして、中国疾病対策センターの報告がある。2月11日までに感染が確認された4万4672人について分析した。

 感染者のうち、80.9%は軽症で、13.8%が重症。4.7%が深刻な状態になった。亡くなったのは2.3%。死者の96%は武漢市を含む湖北省で、湖北省以外での致死率は0.4%にとどまった。

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