「英語の民間試験」と「国語・数学の記述式問題」が見送られた大学入学共通テストは、どんな試験になるのか。AERA 2020年2月24日号では、多く聞かれる疑問点について、テスト開発の実務責任者である、大学入試センターの白井俊氏に尋ねた。
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2019年6月、大学入試センターは2度の試行調査(プレテスト)を経て、21年1月実施予定の大学入学共通テストの問題作成方針を発表した。しかし19年11月に「英語の民間試験」、12月に「国語・数学の記述式問題」の導入が見送られ、改めて出題方針を見直し発表した。国語・数学の発表は先月末。数学は記述式問題がなくなるだけで、変更はなかった。
──記述式問題が出題される予定だった数学(1)は、センター試験よりも試験時間が10分長くなりました。記述式がなくなっても試験時間が70分と変わらないのは、問題数が増えるのでしょうか?
共通テストでは「思考力・判断力・表現力等」をより問う内容になり、プレテストで「試験時間が足りない」傾向が見られました。問題数はセンター試験でも年度によって違います。試験時間に適切な量を出題します。
──太郎さんと花子さんが登場する長い会話形式の設問について、数学的な思考力を測るのに適切なのか。余計な会話部分につまずき本来持っている数学の力が発揮できない生徒が出ないか、懸念の声が上がっています。
会話文を出すこと自体が目的だとは、全く考えていません。ただ、小中学生対象のTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)を見ても、日本の子どもたちは「算数・数学は楽しい」「日常生活に役立つ」と思う割合が国際平均より低い。数学を「学ぶ意義」がわかっていないのです。これまでは「角を切り落とした、立体の面積を求めよ」といった焦点化した問題を中心に出題されてきましたが、18年度のプレテストでは、小学校を訪ねた高校生が階段の傾斜の緩やかさに気づき、三角比を使って表す問題を出題しています。数学が実生活や社会とどう関係しているのか。「学びの意義」を伝えることを共通テストでは重視しています。
国語は「大問五つ/100分」だったのが、記述式の大問1がなくなり「大問四つ/80分」と、センター試験と同じ形式に戻った。