小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中
1月15日、環境省で自らの「育休」を発表する小泉進次郎環境相(左)(c)朝日新聞社
1月15日、環境省で自らの「育休」を発表する小泉進次郎環境相(左)(c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】環境省で自らの「育休」を発表する小泉進次郎環境相

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 小泉進次郎環境大臣が育児休暇を取得する意向を固めました。子の誕生から3カ月の間に、休暇や短時間勤務、テレワークを組み合わせ約2週間分の育児時間を確保するとのこと。わずか2週間とはいえ、現職大臣の育休取得は大きな一歩です。パタハラも当たり前の日本の労働環境を変える良き前例となるでしょう。

 小泉氏には、育児をしながらぜひ「この子のために自分には何ができるか」を考えてほしいです。かけがえのない我が子を通じて世界を考えてみてほしいのです。

 昨年12月20日の会見で小泉氏は、環境活動家のグレタ・トゥンベリさんについて「大人を糾弾するのではなくて、全世代を巻き込むようなアプローチをとるべきだ」と批判しています。グレタさんの演説はただ“大人を糾弾する”内容だったでしょうか? 彼女の呼び掛けに応じてデモに参加した数百万の人々の中には大人も大勢いました。小泉氏も昨年9月の国連気候行動サミットの日本政府代表席で、大臣として彼女の演説を聴いています。気候危機対策は、国家を超えた規模の施策が必要であり、そのために政治家や産業界のトップの決断と行動が必要です。彼女は、そうした権限を持つ人々に対して「すぐに行動を」と訴えたのです。小泉大臣は、それを「大人への糾弾」としか読み取れなかったのでしょうか。

 小泉氏は、我が子を抱く一人の父親であると同時に、温室効果ガス排出削減に消極的だと批判されている国の環境大臣でもあります。彼はただの初心者の父親ではなく、我が子を含む全ての次世代に健全な地球環境を受け継ぐために、他の父親たちにはできない大きな決断を下すことができる立場にあるのです。

 男性が育児をすることはなぜ重要か。それは世の中を自分ごととして見る視点を得られるからです。大臣、どうか実りある育休を。

AERA 2020年1月27日号

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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