「闇と光がせめぎ合う」宮崎駿の作品世界を、タフツ大アメリカ人教授が新著で深掘り (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「闇と光がせめぎ合う」宮崎駿の作品世界を、タフツ大アメリカ人教授が新著で深掘り

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Susan Napier/1955年、米国生まれ。タフツ大学修辞学・日本研究コース教授。専門はアニメーションと日本文化。前著『現代日本のアニメ──「AKIRA」から「千と千尋の神隠し」まで』は第27回日本児童文学学会特別賞を受賞(撮影/横関一浩)

Susan Napier/1955年、米国生まれ。タフツ大学修辞学・日本研究コース教授。専門はアニメーションと日本文化。前著『現代日本のアニメ──「AKIRA」から「千と千尋の神隠し」まで』は第27回日本児童文学学会特別賞を受賞(撮影/横関一浩)

ミヤザキワールド‐宮崎駿の闇と光‐

スーザン ネイピア,Susan Napier,仲 達志

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生命式

村田沙耶香

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 ネイピアさんは戦争中の体験、病気で療養していた母親の存在などから、作品との関係を丁寧に読み解いていく。

「宮崎がきわめて独創的で想像力豊かな芸術家、世界観を持つ『作家』なのは間違いありません。同時に宮崎と彼の芸術は、生まれ育った時代と場所が融合した賜だといえるでしょう。彼は自分を取り巻く世界で起こっている変化に、鋭敏に反応してきました」

 作品の魅力の一つは、類型的ではない、強くてユニークな女性が登場することだ。

「宮崎作品には複雑で興味深いキャラクターが出てきます。ナウシカもわかりやすいヒロインではなく、終末を招きかねない問題に、苦痛を伴いながらも立ち向かう。平面的な悪役がいない、闇と光がせめぎ合う世界を描こうとしているのです」

(ライター・矢内裕子)

■HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE 新井見枝香さんのオススメの一冊

 村田沙耶香さんによる『生命式』は、著者自らがセレクトした危険な短編集。HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの新井見枝香さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *
 かつて「葬式」と呼ばれたそれを「生命式」と呼ぶのは、死んだ人間の体を灰にするのではなく、料理して皆で味わい、その場で男女が受精相手を探して、新しい命を生み出さんとする目的で行われるからだ。ほんの数十年前の価値観では忌まわしい行為だったはずが、「生命式」では、命を食べて命を生み出す素晴らしい風習とされている。

 どんなスタンスで読めばいいのか決めかねたまま、短い小説は終わる。認めたくはないが、人肉の塩角煮に喉が鳴った。知り合いの太腿に、柚子こしょうを添えるなんて悪い冗談にしか思えないのだが、白い飯が欲しくなる。夜の海で行われる神秘的な受精シーンに、性行為のイメージまで揺らぐ。

 小説に価値観を変えられるのではない。自分が思う「正常」の根拠のなさに気付き、叫び出したくなるのだ。

AERA 2020年1月20日号


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