Susan Napier/1955年、米国生まれ。タフツ大学修辞学・日本研究コース教授。専門はアニメーションと日本文化。前著『現代日本のアニメ──「AKIRA」から「千と千尋の神隠し」まで』は第27回日本児童文学学会特別賞を受賞(撮影/横関一浩)
Susan Napier/1955年、米国生まれ。タフツ大学修辞学・日本研究コース教授。専門はアニメーションと日本文化。前著『現代日本のアニメ──「AKIRA」から「千と千尋の神隠し」まで』は第27回日本児童文学学会特別賞を受賞(撮影/横関一浩)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。

【写真】宮崎駿監督が明かす「1番辛かったこと」とは?

 日本のみならず、世界を魅了し続ける宮崎駿。スーザン・ネイピアさんによる『ミヤザキワールド 宮崎駿の闇と光』は、宮崎の人生と芸術の関係から作品世界を考察した画期的な論考だ。著者のスーザンさんに、同著に込めた思いを聞いた。

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<「アニメ」という言葉の語源である「アニマ」は、ラテン語で生命・魂を意味する。京都市伏見区のアニメ制作会社「京都アニメーション(京アニ)」のスタジオにはそんな魂が多く宿っていた>

『ミヤザキワールド』の著者、スーザン・ネイピアさん(64)が京都アニメーションのスタジオ火災が起こった際、いち早くCNNのサイトに寄稿した追悼文の冒頭だ。すぐに日本のSNSでも紹介され、話題となったので目にした読者もいるだろう。

 ネイピアさんが日本のアニメーションや漫画に着目したのは1970年代だ。当時は研究対象として認められなかったが、あきらめることはなかった。10年前からは米国のタフツ大学で宮崎作品を対象としたゼミを指導している。本書はネイピアさんによる、待望の宮崎駿論だ。

「宮崎に関するゼミは学部の中でも人気があり、つねにキャンセル待ちの状態です。ゼミに参加する学生たちは聡明(そうめい)で勉強熱心、新しい考えを受け入れる姿勢があります。宮崎作品が持つ、『観る人の最良のものを引き出す力』が、学生にも影響を与えているように思います」

 本書のテーマは「宮崎駿の芸術と人生のつながりを考えること」だ。「序章 ミヤザキワールドを探して」に続いて、空襲を経験した少年時代、新人アニメーター時代が語られる。そして「ルパン三世 カリオストロの城」から「風立ちぬ」まで、12の作品に新しい光が当てられていく。

「国や文化の境界を超えたキャラクターと世界観を創造し、物語を紡いでいく力。何より豊かな想像力に裏付けられた共感能力を、宮崎がどのように身につけたのか、その謎を解きたいと思いました」

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