ただし、忘れてはならないのは「正しく恐れる」ことだろう。関連性のない地震を無理に関係づけたり、巨大地震の前触れだと過剰に恐れたりすると、それが起こらなかったときに「安心」し、「油断」してしまうことも考えられる。

 例えば、今回の地震は首都直下地震と関連づける声が多かった。しかし、一言で「首都直下」といっても、考えられる発生メカニズムは様々だ。

 確かに、今回地震が起きた茨城県南部でもM7クラスの直下地震が想定されている。だが、それが起こらなかったとしても、そのほか20近いパターンの首都直下地震が起こりうる。水本さんは言う。

「関東平野の直下で起こる大地震には様々なパターンがあります。今回の地震が前触れではないとしても、大きな地震が起こらないわけではない。過剰に恐れる必要はありませんが、いつか来ることは忘れないでください」

(編集部・川口穣)

AERA 2019年12月23日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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