金原瑞人(かねはら・みずひと)/1954年、岡山県生まれ。法政大学教授。翻訳家。「BOOKMARK」編集・発行人。80年代から精力的にYA作品の書評の執筆、紹介を行い、訳書は550冊以上(撮影/写真部・小山幸佑)
金原瑞人(かねはら・みずひと)/1954年、岡山県生まれ。法政大学教授。翻訳家。「BOOKMARK」編集・発行人。80年代から精力的にYA作品の書評の執筆、紹介を行い、訳書は550冊以上(撮影/写真部・小山幸佑)

 金原瑞人さんによる『BOOKMARK 翻訳者による海外文学ブックガイド』は、海外文学を紹介する人気のフリーペーパー「BOOKMARK」に掲載された204冊を紹介する一冊。著者の金原さんに、同著に込めた想いを聞いた。

【写真】CDサイズでキュート!「BOOKMARK」はこちら

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 AERA本誌でも紹介したスタイリッシュなイラストが描かれたCDサイズの小冊子「BOOKMARK」。翻訳家・金原瑞人さん(64)の個人誌で、書店に並ぶとすぐになくなる「幻のフリーペーパー」がついに一冊の本になった。

「若い人に翻訳文学を紹介する媒体を作りたいな、と思っていました。良い作品はたくさん出ているのに、知られていないのはもったいないなあ、と。最初は瓦版みたいなものを考えていたんですが、翻訳家の三辺律子さん、いまデザインをしてくれているオザワミカさんと会って話したら、小冊子でも作れそうだとわかった。そこから、いきなり第1号を作りました」

 24ページフルカラー、毎号テーマを決めて16冊を金原さんと三辺さんが選書し、本の翻訳者に原稿を依頼している。

「音楽と村上春樹」「戦争小説と佐藤亜紀」など、テーマに縁のある作家のエッセーを巻頭に掲載。他にも「現代青春小説」から「装幀」「新訳」「LGBT」「グラフィックノベル」まで、毎回のテーマもエッジが利いている。

「訳した本について、翻訳家自身が書く機会って、意外にないんですよ。巻末のあとがきとは別な視点で、その本について書くことを喜んでくださる方は多いですね」

 翻訳者へは原稿料の代わりに、掲載誌30冊を贈呈する、というスタイルだ。

「考えてみると、翻訳書の紹介をする仕事を、僕はずっと続けてきたんですね。これまでに本になったものだけでも、『YA(ヤングアダルト)読書案内』『10代のためのYAブックガイド』などいろいろ。その中で、他の人と一緒に選書する企画もあって、自分にはない読み方に出合えるのが面白かった。『BOOKMARK』もその流れにあるんだと思います」

 書店に冊子を置いて、できれば紹介している本と並べてもらいたい──という願いは、いくつかの書店で具体化した。

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