「出してみたら、図書館への配布を手伝ってくれる方、店頭に置いてミニフェアをしてくれる書店員さんなどが現れて、助けてもらいました。コンテンツはウェブでもすべて公開しているので、誰でも読んでもらえるし、POPに使ってもらってもいいんです」

 年4回の発行から年に2回の発行に。部数は現在7500部、最新号は短編特集で巻頭エッセーは宮内悠介さん。

「書店さんだけでなく、図書館でフェアをしてくれるところが増えると嬉しいです。海外文学の面白い作品は、まだまだあるんですよ」

(ライター・矢内裕子)

■東京堂書店の竹田学さんオススメの一冊

『芝園団地に住んでいます 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか』は、移民社会化する日本のリアルな姿を描いた貴重なルポだ。東京堂書店の竹田学さんは同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 埼玉県川口市の芝園団地は住民5千人弱のうち、半数以上が外国人。そのほとんどは中国人だ。2017年に芝園団地に移り住んだ著者は、ジャーナリストの視点と生活者の視点、両面からこの新たなチャイナタウンの実相に迫る。

 芝園団地は自治会や学生ボランティアの取り組みによって、日本人と中国人の交流が進んだと肯定的に紹介されてきた。だが少子高齢化が進み、日本人住民が減る一方で中国人住民が増加し、日本人住民は自分たちの居場所が奪われるという不安を抱えている。

 著者は地域の祭りや自治会の催しに参加し、住民との対話を重ね、排外主義につながりかねない危うい団地の空気を住民の微細な感情をすくいとって映し出す。本書は移民社会化する日本において、多文化共生が私たちの喫緊の課題であることを教える貴重なルポだ。続編も期待したい。

AERA 2019年11月25日号