「大きな制度設計を考えるワーキンググループで、やはり記述式問題の導入が最も大きな話題でした。私を含めて英語の専門家は一人もいなかったので、4技能評価をどうするかなど英語の細かい議論はできない。文科省の担当者は、英語については別に専門家による検討を考えたい、と話していました」

 この検討・準備グループの議事録は17年5月の第10回から公開されているものの、それまでは非公開。英語の小委員会があったかどうかも含めて不透明ななか、巨大な利権が発生する新テストが産声を上げていたのだ。国会でも野党はこの経緯に注目、9回目までの議事録の公開を求め、政府もそれに応じる姿勢を示した。「第3のモリカケ」検証の扉が、ようやくこじ開けられた。

 政府が英語民間試験を推進する動機について、大学入試センター名誉教授の荒井克弘氏はこう分析した。

「最近は経済産業省も民間の教育産業に注目し、『教育再生』を掲げた情報発信を熱心に行うようになった。新産業として芽があると思ってのことでしょう。受験生の大きなマーケットを確保するためには、入試に組み込んで定着させるのが最も効率的ですから。あくまで私の推論ですが」

 そしてもう一つ挙げたのが文科省の「野心」だった。今回の英語民間試験導入の経緯の中で、文科省で事務局として動いてきたのは、高校までを司る初等中等教育局で、大学や短大を所管する高等教育局は影が薄かった。荒井氏が続ける。

「文科省には、高大接続改革の機に乗じて、財政面からだけでなく、教育面でも大学へのコントロールを強化したい意図があった。16年4月に初中局の審議官が大学入試センター理事に就任し、1年後には次期学習指導要領のまとめ役を担った同局の行政官が新テスト事業部に着任して、新テスト開発の主導権を初中局が握った。彼らからしたら、是が非でも攻略したいポイントだったでしょう」

 大学入試センターは全国から大学教員約700人を集めて問題作成、点検に当たってきた。入学希望者を選抜する大学側の責任として行ってきた「聖域」が壊れ、初中局に陣頭指揮を握られた。

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