(c)朝日新聞社
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 土壇場で延期が決まった大学入学共通テストの英語民間試験。公平性が担保されないだけでなく、 審議の過程も不透明だ。導入の経緯を「知るはず」の識者たちが取材に応じた。AERA 2019年11月18日号に掲載された記事を紹介する。

【「英語民間検定試験」現場からの悲痛な声続出】

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 15年3月、「中央教育審議会」会長だった安西祐一郎氏を座長に文科省が始めた「高大接続システム改革会議」(27人)は約1年後の16年3月、「4技能のうち『話すこと』については特に環境整備や採点等の観点から、20年度当初からの実施可能性について十分検討する必要がある」などの最終報告を行った。

 メンバーの一人、南風原朝和(はえばらともかず)・東京大学名誉教授は本誌の取材にこう答えた。

「会議では、全てマークシート式の現行の大学入試センター試験に、国語などに一部記述式問題を導入するかどうか白熱した議論があったものの、英語民間試験のことはほとんど話題にも上らなかった。重要な議題については文科省の担当者が事前に打ち合わせに来られていましたが、それもありませんでした。最終報告が導入時期の遅れの可能性を示唆しているように、差し迫った議論にはならなかったし、民間に丸投げするような話は一切出ませんでした」

 心理統計学とテスト理論が専門の南風原氏は東京大学高大接続研究開発センター長を務めた、この分野の第一人者だ。

 しかしわずか5カ月後に文科省が発表した「高大接続改革の進捗状況について」で状況は一変、システム改革会議で俎上にも上らなかった「センター試験英語の廃止」方針が打ち出された。この間、議論していたのは会議のメンバーなどから選ばれた9人からなる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)検討・準備グループ」だ。だが、委員に入った全国約5200の国公私立高が参加する「全国高等学校長協会(全高長)」元会長で、東京都立八王子東高校で統括校長を務める宮本久也(ひさや)氏は、こう首をかしげる。

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