松岡:映画全体を観ることがベストで目標ではあるんですが、自分の演技が気になっちゃいますね。でも、これは私が初めて作品を観られた映画です。本当に初めて初号試写で落ち込まなかったんです。いつもは「役者なんかやめちまえ」って思うんですが。多分、俳優はみんな初号試写が一番嫌いですよね。

鈴木:僕も毎回「今日は反省しないで全体の印象を客観的に観るぞ」って思うけどできない。全部自分の反省になっちゃうな。

佐藤:僕は試写を一人で観ます。周りも気を使うでしょ。それがダメなんですよ。それに作品がすばらしければすばらしいほど、自分がもっとできたらもっとよかったのに、って思っちゃう。

松岡:わかります。足を引っ張っている気すらしてきますよね。

佐藤:そう、僕のあそこさえなければ完璧だったのに、って。

松岡:でも、この映画は最高ですよ。私、この映画に出ていなかったら悔しかったと思う。

佐藤:そうだね。映画が家族のことを考えるきっかけや、家族と会ったり話したりするきっかけになってくれたらうれしいですね。僕は自分から親に連絡することが少ないんですが、この作品に出合えて素直に連絡してみようと思えたので。

松岡:私は家族に対してゴロゴロした、もやもやした気持ちを抱えている人たちが許される映画だと思ったんです。休日にお父さんとキャッチボールするような家族という理想はあっても、それぞれの家庭でみんな頑張ってきたじゃないって。私も実際演じていて許されましたから。

鈴木:いろんな立場から見ると全然違うように見えてくる、景色が違う話なのかな。成長して、人の痛みがわかるようになって、大人になったからこそすごくわかると思います。親である人は親の立場で見られるし、みんながみんな家族に対して共感してもらえる話だと思う。今、家族に何か抱えている人に見てもらえたらうれしいですね。

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2019年11月18日号