私立の難関大や国立大がAO入試を拡大する中で、もはや「AO=学力不問」批判は当たらなくなっていると、早稲田塾の大澤さんは指摘する。

「国立大を中心にセンター試験を課したり、評定平均を問う大学が増えています。しかも大学入試改革では基礎学力の担保が必須となります」

 再来年に迫る新しい大学入試では、推薦入試は「学校推薦型選抜」、AO入試は「総合型選抜」、一般入試は「一般選抜」に衣替えする。学校推薦型と総合型で基礎学力が問われるようになる一方、一般選抜でも「活動記録」や「学びの計画書」など主体性を測る資料の提出が求められるようになる。一般入試でもAOの要素が取り入れられるのだ。

 大学にとってAOはいまや、目的意識を持ち伸びしろの大きい優秀な学生を、着実につなぎとめる重要な手段となっている。

 今の優秀な学生は海外大進学を視野に入れていることも多い。その海外大では、まさにAO型入試がスタンダード。日本の大学が、国際的には特異なテスト一発勝負の入試にしがみついていたのでは、優秀な学生に来てもらえない時代なのだ。大学・高校の教育改革に詳しい進研アドの中村浩二さんは大学のAO重視の背景には、授業スタイルの変化もあると指摘する。

「大学の授業は一斉型からディスカッション型へと切り替わっています。ディスカッションするには、多様なバックグラウンドを持つ学生が自分の視点で意見を言えなくてはなりません。そういう学生を見つける手段としてもAOは有効なのです」

 一方、中堅大や地方の小規模大の間でも、AO入試は広がりを見せる。もちろんそこには早期に入学者を確定させ、経営を安定させたいという思惑がある。いわゆる大学入試の「定員厳格化」により、私学助成金の交付対象となる「入学定員に対する実入学者の割合」の基準が近年厳しくなり、18年度にはその割合が大規模校で1.1倍に。大学側は歩留まりが読みにくくなることから、安定した入学者数を確保できるAO入試に力を入れているのだ。

 その一方で中村さんは、AO入試ならではの「丁寧なプロセス」を活用することで、入学する学生の意識を変え、大学自体のレベルアップにつなげたいという意図もあるという。

「例えば鎌倉女子大学などでは、受験生に高校時代の学びをどう大学で生かすのかといった視点でエントリーシートをしっかり書かせ、プレゼンや面接に臨ませています。結果、学生にここで学びたいという意識が芽生え、入学後の中退者が減少。GPA(成績評価値)の平均も上がったと聞いています」(中村さん)

(編集部・石臥薫子)

東大や京大、阪大など難関10国立大への推薦・AO入試合格者数が多い高校ランキングは、「AERA 2019年11月4日号」に詳報を掲載している。

AERA 2019年11月4日号より抜粋