台風19号では大河川の支流域で被害が相次いだ。バックウォーターや想定外の浸水への対策は、今後各自治体にとって急務だ。

 支流でも一級河川と同等の治水対策が進むことが望ましいが、費用や時間の限界もある。

 水害から命を守るためには、基本的なことだが、日頃からハザードマップで自宅周辺の危険な箇所をチェックしておきたい。先述した多摩川の支流、平瀬川の氾濫では、ハザードマップと浸水地域がほぼ一致した。

 いっぽう、自主的な防災対策として「古地図」の活用を提案するのは、地形や河川に詳しい首都大学東京の横山勝英(かつひで)教授(都市環境学部)だ。

「近年の異常気象により、ハザードマップも想定していない場所が浸水する危険性があります。古地図を見れば、過去、そこが田んぼやため池だったとか、川が流れていたとか、土地の成り立ちが明確にわかります」

 横山教授によれば、「沼」とか「新田」といった災害の記憶を今に伝える地名もあるが、住宅開発が進み新しい名前になり、昔の地名が残っていないことも多い。古地図を見て、浸水の危険性が高い場所を判別できるという。古地図は国土地理院がホームページで公開し、図書館でも閲覧できる。

「古地図を見てより理解を深めておけば、身の安全を守ることにつながります」(横山教授)

(編集部・野村昌二)

AERA 2019年11月4日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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