小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
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2018年5月、人種差別を防ぐ研修のため、一時閉店したスターバックス。米ニューヨークで (c)朝日新聞社
2018年5月、人種差別を防ぐ研修のため、一時閉店したスターバックス。米ニューヨークで (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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「海外で、中国人と間違われて侮辱された。白人は日本人と中国人の見分けもつかないんだ」と怒る人がいます。どうも「自分は中国人なんかと一緒にされたくない」と怒っているようです。

 確かに、アジア系の人を見ると「チンチョンチンチョン」と中国語を真似てからかったり、目を引っ張ってつり上げる仕草で侮辱したりする人がいます。ほとんどの人は、中国人と韓国人と日本人の見分けがつきません(私も見た目だけでは相手が日本人かどうかわからないことがよくあります)。

 オーストラリアに引っ越したばかりの頃、サッカークラブの公開練習に参加していた次男の後ろで聞こえよがしに「チンチョンチンチョン」と騒ぐ白人の少年たちがいました。気を揉んで見ていましたが次男は気づいておらず、彼らもそれ以上絡んでこなかったのでそれきりとなりましたが、この先アジア系であることでひどいいじめを受けたらどうしようと不安でした。幸いなことに、私たち一家はこれまでのところ深刻な差別を受けたことはありません。でも街でアジア系への差別感情を持っている人と出会うことはあります。その時に相手がこちらを中国人だと思おうが日本人だと思おうが、黄色人種への差別であることは同じです。相手が単に間違えたときは「私は日本人ですよ」と言えばいい。でも「チンチョン」などのからかいは“奇妙な言葉を話す、顔付きの違うアジア人”を貶めることが目的ですから、相手がどこの国の人かはレイシストにとってはどうでもいいのです。

 中国人と間違われたと怒る人は、中国人への嫌悪を露わにしている点ではレイシストと同じです。日本にはアジア各地から大勢の人が働きに来ます。肌の色や国籍や文化の違いで人を貶めるような物言いは許されないと知ってほしいです。

AERA 2019年10月21日号