予想外の発表に驚いたのは、2015年W杯開幕前に行われたジョージアとのウォームアップマッチでのこと。当時のエディー・ジョーンズ監督が「W杯に向けて試したい」と、通常フランカー(6番、7番)で出場する身長190センチ弱のツイ・ヘンドリック選手を11番のウィングに登録。だが、日本代表の11番は俊足で小柄な選手が多く、4Lサイズの用意がなかった。そこで鴛淵さんは、スタジアム周辺のスポーツ用品店にお願いし、背番号を持ち込み、専用アイロンで接着して、届けた。

 大会ごとに進化を重ね、今大会はポジションに合わせて3種類のジャージーを開発。フォワードは第1列用と第2、3列用があり、スクラムで味方同士ジャージーを握り合う際に生地が伸びすぎると力が分散してしまうため、経編(たてあみ)技術を採用して伸びすぎず耐久性に優れた素材にした。バックスは軽快に走れて、パスや相手をかわす際にも動きやすいよう、伸縮性がある丸編(まるあみ)の素材を使い、さらに相手につかまれにくいシルエットにした。胸部はボールを落としにくくするための滑り止め加工がされ、腰回りは相手のタックルを逃れるために滑りやすくなっている。

 現日本代表は、ジェイミー・ジョセフ監督の方針で複数のポジションをこなせる選手が多く、どこで出場するかわかりにくい。鴛淵さんは「予想は過去の大会以上に難しい」と話す。

 フォワードは4L、5Lを納品しておけばまず間違いないが、一般的に小柄とされるバックスに5Lサイズのアタアタ・モエアキオラ選手や、ウィリアム・トゥポウ選手など大型選手がいるため、サイズ展開が幅広い。試合前から一筋縄では行かないのだ。(編集部・深澤友紀)

AERA 2019年10月7日号