■早稲田 岸田文雄さん(62)衆議院議員、自民党政調会長

 早稲田大学で一番共感を覚えたことは、多様性がありリベラルであることです。宏池会のイメージと重なります。昔は国際的な雰囲気は少なかったですが、いまは留学生も多く、グローバルな多様性を大事にしていますね。私は法学部でしたが、印象に残っているのは4年生の時に所属した浦川道太郎先生の民法のゼミ。不法行為についてのゼミでしたが、先生とは国会議員になってからもお会いするなど、その後もありがたいご縁を頂きました。後に総長になられた西原春夫先生の刑法の講義も、西原節といった名調子で大変印象に残っています。在学中、父親の選挙を手伝いに地元に帰ることもありましたが、当時は自分自身の将来について具体的に考えていたわけではありませんでした。ありあまるほど自由な時間で、あちこちに旅に出たり、読書をしたり。読書は乱読でしたが、吉川英治の『宮本武蔵』やドストエフスキーの『罪と罰』が印象に残っています。司馬遼太郎も随分読みました。防衛大臣の岩屋毅とは早稲田で一緒で、在学中からよく飲みに行った仲間です。そういった友にも恵まれ、いま思えば大変贅沢な時間を過ごさせてもらいました。早稲田で、同じ日本といっても地方があって大変広い、世の中にはいろいろな人間がいて、いろいろな考え方があると、多様性について考えさせられました。それが私の政治活動の原点になっています。

(編集部・小田健司=慶應、小柳暁子=早稲田)

AERA 2019年9月16日号