東京で7月11日にあったフラワーデモでは、終了後もその場に残り、参加者同士で話する姿が多く見られた(撮影/今村拓馬)
東京で7月11日にあったフラワーデモでは、終了後もその場に残り、参加者同士で話する姿が多く見られた(撮影/今村拓馬)

 性暴力を許さない声をあげる「フラワーデモ」。かつて性被害を受けた人たちが安心して傷を語れる癒しの場として重要な役割を担っている。被害者たちの声から意識されてこなかったことも見えてくる。

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 多くの人が#MeTooと語ることで、今まで見えづらかった問題が可視化していく。トランスジェンダーの男性(30)はスピーチで、性的マイノリティーが性暴力を受けたときに強いられる現実を訴えた。

 彼は元は女性で、現在は男性として生活をしている。恋愛対象は男性。半年前に掲示板で知り合った男性とホテルへ行き、合意のない性行為をされ、首を絞められた。彼の首には青いアザが残った。だが、彼を苦しめたのは、殺されるかもしれないという恐怖だけではなかった。

「その後、性暴力の被害支援をする電話相談へ電話をしたら『声が男ですよね。男性の方はちょっと』と言われました」

 この第一声に対し、彼はとっさに言った。

「自分は元は女性なんです。ここしか相談できないので、電話を切らないでください」

 結局はLGBTのための相談窓口を紹介されるだけ。けれども案内されたLGBTの支援窓口は性暴力被害には対応しておらず、すぐに支援には結びつかなかった。

 彼は戸籍上も男性に変更しているが、女性器は残っている。それが、警察へ被害届を出そうとしたときに問題になった。

「戸籍上は男性とはいえ女性器がある状態で、意図しない性行為をした場合に、法律上どう扱うかがわからない。あなたみたいな事例はないし、そういう人をとりあげたくない、と言われたんです」

 掲示板を利用しての出会いだったこと、相手と一緒にホテルに入って出たことも、合意があったとしかみなされないと言われた。録音や録画でもない限り、性暴力を受けたことを立証もできないし、そもそもあなたが悪いと責められもした。

「逃げればよかったとも言われました。でも、恐怖で逃げられなかったんです。言うことをきかないと殺されるんじゃないか、追いかけられて何かあったらどうしようと」

 彼は身長が150センチほどと小柄。体格差のある人を前に、恐怖で足が動かなかったという。結局、必死に話したことは警察では受け入れられず、被害届は出せなかった。

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