「トランスジェンダーであることを理由に、社会的に排除や差別されることもあり、当事者はなかなか声をあげることができないんです。だから性被害にあっても泣き寝入りをしている友人もいます。被害を受けた当事者が適切な支援を受けられるよう、これからも僕は勇気をもって発言し続けます」

 教師から受けた性被害の告白をしたのは石田郁子さん(41)。石田さんは15歳から19歳まで、教師からキスをされるなどの性被害にあってきた。

 数年前、養護施設の教師が生徒に性暴力をふるったとして提訴された裁判を傍聴したことが、自分が受けたことも性被害だと気づくきっかけになった。でもその話をしても返ってくるのは、「今さら何言ってるの?」「恋愛だったんでしょ」という言葉ばかり。それにも傷ついた。

「その教員はまだ学校にいます。教育委員会に証拠も出して訴えましたが、処分してくれません。それは子どもたちの安全を全然考えていないということです」

 石田さんは民事訴訟を起こし、実名で記者会見も行った。

「バッシングされるかと怖かったんですが、私も同じような被害にあいましたとか、応援しますというような言葉が多かった。これからも粘って、訴えていこうと思っています」

 そう言って、次回のデモにも参加すると約束した。

 これまでにも多くの性暴力がニュースとなり、伊藤詩織さん、小林美佳さん、山本潤さん、東小雪さん、田中真生さんらが実名で自身や家族の性被害を告白してきた。だが、性被害を受けた多くの人が痛みを抱えながらも、声をあげられずにいた。

 フラワーデモの発起人の一人で作家の北原みのりさんは言う。

「まずは自分を癒やし、相手を癒やすという場所が求められていたのかもしれません。#MeTooの声をあげるには、『あなたを信じます』という#WithYouが必要なのだと思います。日本の社会には#WithYouが足りなかった。性暴力に対して悲しみという怒りを表現し、花を持って優しい共感を表明するデモだから、沈黙が破れたのだと思います」

 いやなものはいや、おかしいものはおかしい。そんな声がつぶされない社会になるまで、あきらめずに声をあげていかなくてはならない。

 次回のフラワーデモは8月11日に全国各地で開催される。(編集部・大川恵実)

AERA 2019年7月29日号より抜粋