同志社大学大学院教授・浜矩子(左)/東京大学名誉教授・姜尚中
同志社大学大学院教授・浜矩子(左)/東京大学名誉教授・姜尚中

 7月21日の投開票に向けて 与野党の論戦が続く参議院選挙。今回の争点は何か。どんな視点が欠かせないのか。アエラ連載陣が語るポイントをヒントに、いざ投票所へ──。

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●浜矩子(同志社大学大学院教授) 

 今回の参院選で最大のポイントは、安倍首相率いるチーム・アホノミクスの「下心政治」を排除することだ。投票行動によって、彼らの下心から、政治を解放することだ。

 下心とは野望だ。21世紀版の大日本帝国をつくるという野望だ。安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を掲げている。戦後から脱却するということはつまり、戦前に戻ることだ。彼らは戦前に戻るという自らの下心のために、政策を私物化し、行政を私物化している。全ての政策がそこに結びついている。アホノミクスはその中核だ。

 安倍首相は2015年、米国で演説した際に「アベノミクスと安倍政権の外交・安全保障政策は表裏一体だ」と明言している。アホノミクスの役割は、21世紀版大日本帝国の経済基盤をつくることだ。

 さらにこのとき安倍首相は「GDPを大きくすることで、国防費を増やすことができる」とも言っている。アホノミクスの真の目的は、経済を国民にとってより良く機能させることではなく、軍備を増強することにある。本人がそう言っているのだから間違いない。

 戦前に回帰し、軍備を増強するという下心のため政策や行政を私物化する。そんな政治がのさばることを許してはいけない。その状況からこそ「脱却」しなくてはなるまい。

(構成/編集部・上栗崇)

●姜尚中(東京大学名誉教授)

 アベノミクスは6年7カ月が経ちましたが、実質賃金は上がってはいません。雇用の機会を増やしたとはいえ、非正規雇用の割合は4割を超え、就職氷河期世代の非正規化は依然として深刻です。さらに長寿社会では老後の生活費の工面や健康寿命の確保が不可欠であり、医療や介護、福祉の充実が欠かせません。そのためには人材の確保が必須です。しかし、現状では福祉系の学部に大学生がなかなか集まりそうにありません。私は長崎でミッション系のこぢんまりとした大学の学院長の職にありますが、やはり悩みのタネのひとつは福祉系の学科になかなか学生が応募してくれないことです。これらの原因のひとつに福祉などに携わる職員の賃金の低さが挙げられます。

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