一方、急速に勢力を伸ばしている「ペイ」の多くは、QRコードやバーコードで決済する方式を採用している。チャートからも分かるとおり、18年以降に限っても10社超がサービスを始めたり、参入を発表したりしている。まるで、生物の進化が爆発的に進み多種多様な種が出現したカンブリア紀の様相だ。中でもソフトバンクとヤフーの合弁会社が手がけるPayPayは、18年10月のサービス開始から1年足らずで、利用可能店が60万店を突破。街の小さなお店でも、赤い「P」のマークを目にしたことがある人は多いだろう。

 なぜQRコード決済が爆発的に広がっているのか。キャッシュレス決済に詳しいジャーナリストの岩田昭男さん(67)が指摘するのは、加盟店が導入する際のハードルの低さだ。

「先に中国で広がった方式で、クレジットカードやフェリカのように専用の読み取り端末やPOS(販売時点情報管理)システムが不要なため、加盟店側は導入コストを抑えられます」

 今あるレジを買い替えなくても、スマホやタブレットが1台あれば導入できる。「ペイ」を始めた各社はかつて消費者にスマホを売ったときのように、初期費用「0円」の誘い文句で全国の加盟店を勧誘しているとみられる。各社の追い風になっているのが、「国策」だ。

「各社が意識しているのは、消費増税による景気悪化を防ぐために政府が導入を決めている『ポイント還元』です。10月以降、消費者がキャッシュレス決済を使うと、中小規模の小売店舗で支払額の5%、コンビニや外食などのフランチャイズ店で2%のポイントが還元される方向です」(岩田さん)

 国策という「神風」をにらみ、クーポンやポイント還元で「お得さ」を打ち出して激しく利用者を奪い合う各社。では今、どの「ペイ」を選ぶのが本当にお得なのだろうか。

(ライター・大西洋平、編集部・福井しほ)

AERA 2019年6月17日号