21世紀になるとバレエに関する具体的な情報が社会に行き渡り、『Do Da Dancin’!』(槇村さとる)、『舞姫 テレプシコーラ』(山岸凉子)など等身大の主人公が成長していく物語が生まれました。一方で、男性向け漫画誌にも『昴』(曽田正人)のようなバレエ漫画が登場し、ダンサーの身体が荒々しく動的に表現されました。そのリアリティーは、以前には考えられないもの。現在、青年漫画誌で連載中の『絢爛たるグランドセーヌ』(Cuvie)も、従来のスポ根やシンデレラストーリーの枠組みを超えて、普通の女の子が淡々とバレエに取り組み、国際コンクールに出場しと、「隣の子」的な現実感がより深まっています。

 最近では『ダンス・ダンス・ダンスール』(ジョージ朝倉)のように、バレエダンサーを目指す男の子が主人公の作品が目立ちます。男性が化粧をして、華やかな衣装を着て舞台に立つことが、今はカッコいい。「男らしさ」に対する態度が、社会の中で変わってきています。

 フィギュアスケート人気にも通じますが、欧米への憧憬が限りなく薄れる一方で、男女問わず「身体能力の高い人」へのリスペクトが高まっている時代。バレエ漫画もそのような時代の気分とつながっています。

(ジャーナリスト・清野由美)

AERA 2019年6月10日号