岩下朋世・相模女子大学学芸学部准教授によると、フランスや韓国でもバレエを題材にした漫画が登場しているという(撮影/清野由美)
岩下朋世・相模女子大学学芸学部准教授によると、フランスや韓国でもバレエを題材にした漫画が登場しているという(撮影/清野由美)
バレエ漫画も進化する(AERA 2019年6月10日号より)
バレエ漫画も進化する(AERA 2019年6月10日号より)

 日本におけるバレエの歩みは、バレエ漫画の歩みでもある。「大きな瞳に星がキラキラ」から「ダンサーの筋肉と汗」へと描写は変化。少女漫画研究者、岩下朋世さんに変遷を聞いた。

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ヨーロッパ発のハイソなバレエが、日本では漫画という大衆メディアに載って広がりました。

 1950年代に手塚治虫がバレエを取り入れた作品を描いていますが、バレエが少女漫画の人気になるのは、森下洋子が登場した60年前後。その後、定番化したバレエ漫画は学年誌でおなじみのジャンルとなり、そこで活躍したのが谷ゆき子です。谷の作品は、バレリーナを目指す女の子がお母さんや弟に死なれたり、妹が誘拐されたり、虎に襲われたりと、奇天烈な展開を見せます。それが小学生に訴えるストーリーだったからですが、作品の本質は「母子もの」であり、メロドラマを飾るきらびやかなモチーフとしてバレエが使われていたのです。

 同時代の状況も踏まえたリアリティーのあるバレエ漫画が現れるのは、海外渡航が一般化し始め、バレエ団の日本公演が増えた70年代。『アラベスク』(山岸凉子)、『SWAN』(有吉京子)という2作品で、流れは劇的に変わりました。いずれも自己研鑽の「道」としてバレエが描かれ、ここでバレエ漫画は一種のスポ根ジャンル化します。

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