支払った保険料 取り返せるのは18年後(AERA 2019年6月3日号より)
支払った保険料 取り返せるのは18年後(AERA 2019年6月3日号より)
菱田雅生(ひしだ・まさお)/大学卒業後、山一證券を経て独立。資産運用や住宅ローン、確定拠出年金などをテーマに講演や執筆を行っている(写真:本人提供)
菱田雅生(ひしだ・まさお)/大学卒業後、山一證券を経て独立。資産運用や住宅ローン、確定拠出年金などをテーマに講演や執筆を行っている(写真:本人提供)

 今年4月、国は70歳以降も会社員として働き続ける人に厚生年金への加入を義務付け、保険料負担をさせる方向で検討に入った。実際に制度が変更された場合どうなるのか。ファイナンシャルプランナーの菱田雅生さんに聞いた。

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70歳以上の会社員も厚生年金保険料を負担することになれば、トータルの保険料負担が重くなる分だけ損ではないのか。

「国民年金分である老齢基礎年金は、40年以上加入しても上乗せはありませんが、厚生年金分である老齢厚生年金は加入期間が延びれば、その分だけ増額されます。65歳まで加入した分は65歳からの年金額に反映され、70歳まで加入した分は70歳からの年金額に反映されるのです」(ファイナンシャルプランナー=CFP・菱田雅生さん、以下同)

 現行制度では、70歳以降は厚生年金保険料の負担がなくなるので、70歳以降の勤務期間は年金額には反映されない。それを今後は、70歳以降も厚生年金保険料を負担させる代わりに、年金額にも反映できるように見直す方針のようだ。

「何歳まで加入を義務付けるかはまだ決まっていませんが、仮に75歳まで加入できるとすると、75歳からの年金額に反映されるようなかたちになるでしょう」

 厚生年金保険料を支払った分だけ年金額が増額されるというのはありがたい話だが、実際どの程度増額されるのだろうか。菱田さんに試算してもらった。

 まずは現行制度での「損益」から見てみよう。65歳以降も会社員として働き続けた場合、月額8.8万円以上の給与をもらっている場合は厚生年金保険料を支払わなければならない。厚生年金保険料率は、17年9月から18.3%で固定されている。これを労使折半(自己負担は半額)で支払うわけだ。

 チャートは、給料が月15万円の場合と、月20万円の場合で試算した結果だ。月15万円の給与で5年間働くと、トータルの厚生年金保険料(自己負担分)は約82万円。70歳からの年金額に反映される増額分は年4.6万円程度のようだ。月20万円の給与の場合は、5年間の保険料が約110万円で、増額分は年6万円強のようだ。

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