原発すでに9基が再稼働(AERA 2019年3月18日号より)
原発すでに9基が再稼働(AERA 2019年3月18日号より)
「原発ゼロ」への思いを語る小泉純一郎元首相(77)。「ウソとわかって黙っているわけにはいかない」と力を込めた(撮影/写真部・片山菜緒子)
「原発ゼロ」への思いを語る小泉純一郎元首相(77)。「ウソとわかって黙っているわけにはいかない」と力を込めた(撮影/写真部・片山菜緒子)

 福島第一原発の事故から8年。汚染水はすでに約112万トンに及び、その最終処分の方法は未だ決まっていない。安倍政権下で再稼働が相次ぐ中、小泉純一郎元首相は独占インタビューで「自民も一枚岩じゃない。次の首相が原発ゼロを打ち出す」と大胆に予測した。

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──原発がなければ、電力が足りなくなるという声もあります。

「小泉さんね、原発をやめて暑い夏や寒い冬にエアコンが止まると我慢できないでしょう」と言ってくる人がいる。しかし13年9月から15年9月までの約2年間、日本に54基あった原発は1基も動いていなかった。つまり「原発ゼロ」。その間、北海道から沖縄まで、電力が足りないという理由での停電は1日もなかった。「原発ゼロ」でも大丈夫だったということを事実が証明している。この事実は重い。

──しかし安倍政権では「原発ゼロ」は起こりそうにありません。夏には参議院選挙が控えています。野党が「原発ゼロ」を争点にすればどうでしょう。

 本来だったら野党がもっと積極的に「原発ゼロ」を打ち出すべきなんだ。今の野党の多くは、中小企業の労働組合から支持を受けているから「原発ゼロ」を言えない。原発をつくるのに大量の鉄やセメントなどを使う。それらを地元の中小企業が請け負っているから、原発ゼロと言えば組合員が離れていく。

 しかし、「労働組合なんて大したことない」と言っているのに、野党はどうしてわかんないのか。小選挙区というのは支持団体ばかりに頼っていても当選はできない。仮に野党がこの夏の参院選で「原発ゼロ」を争点に出したら、自民党も危ないよ。

──その自民党はどうでしょう。

 自民党も支持団体なんかごくわずか。圧倒的多数は無党派層。小選挙区制というのは無党派層の支持がないと当選できない。

 自民党だって国民のことを考えないと政権は続かない。なんで自民党が長年、政権を担当してきたか。国民の声に敏感な政党だから。国民多数の意見に合うような政策を出していたから、政権を担当してきた。国民の半数以上は、本心では原発なんかないほうがいいと思っている。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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