「インターハイさえ出られたら走れなくなってもいい」鉄剤注射がはびこる背景 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「インターハイさえ出られたら走れなくなってもいい」鉄剤注射がはびこる背景

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島沢優子AERA
貧血治療における鉄分摂取の方法と吸収する仕組みの違い(AERA 2019年3月18日号より)

貧血治療における鉄分摂取の方法と吸収する仕組みの違い(AERA 2019年3月18日号より)

図版=2019年3月18日号より

図版=2019年3月18日号より

 昨年12月、高校駅伝の豪高校で不適切使用が発覚した鉄剤注射問題で、日本陸連は原則禁止を決定。陸上選手の「鉄欠乏性貧血」の解消を目的とした鉄剤注射の安易な使用は、選手に肝機能障害などをもたらすリスクを抱えている。問われているのは指導者の質だ。

【「大学駅伝」に出た人で、鉄剤を注射したことがある割合は?】

*  *  *
 鉄剤注射を選手に打たせる問題の背景について「根はもっと深いものだ」ととらえるのが陸連医事委員長の山澤文裕さん(62)だ。

「注射を使うようになった鉄欠乏の背景に、体重コントロールのための減食や練習過多による低栄養に端を発した負の連鎖がある。指導者教育が急務だ」

過度なダイエットや練習が原因で鉄欠乏状態及びホルモンバランスを崩すことから無月経となり、骨粗しょう症や疲労骨折を起こしやすくなる。それを解消するには食やトレーニングの見直しが不可欠なのに、安易に鉄剤注射で鉄欠乏だけを解決しようとしているようなものだ。

また、山澤さんによると、日本で使用される製剤(注射液)には、血液のなかにあるリンという物質を減らす副作用があるという。打たれた本人が気づかない間に「低リン血症」になり、骨軟化症などを引き起こす可能性がある。骨の状態が悪化し、疲労骨折をしやすくなる。

元長距離選手の女性が、健康診断で「体がぼろぼろだった」というのは決して大げさな話ではないことがわかる。

 となると、日本の女子マラソン界は大丈夫だろうかと心配になる。

 東京五輪のマラソン代表選手は、今年9月15日に開催されるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)などを経て選考される。選手はまずMGCシリーズと呼ばれる国内主要大会に出て「MGC出場権」を獲得しなくてはいけない。この記事が出るころには結果が出ているであろう名古屋ウィメンズマラソンもそのひとつだ。

 しかしながら、目下のところMGC出場権獲得者は男子28人に対し、女子は9人と3分の1にも満たない。有森裕子、高橋尚子、野口みずきといった多くのメダリストが輩出してきたはずなのに、これはどういうことか。

 関東の病院に勤務するスポーツ医は、こう分析する。


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