知事応接室には、歴代知事とともに昨年8月に亡くなった翁長雄志前知事の肖像画も。玉城知事は翁長氏から「辺野古阻止」の遺志を引き継いだ(撮影/大城弘明)
知事応接室には、歴代知事とともに昨年8月に亡くなった翁長雄志前知事の肖像画も。玉城知事は翁長氏から「辺野古阻止」の遺志を引き継いだ(撮影/大城弘明)
辺野古沖では、県民投票後も土砂投入が続いている=2019年2月25日、沖縄県名護市 (c)朝日新聞社
辺野古沖では、県民投票後も土砂投入が続いている=2019年2月25日、沖縄県名護市 (c)朝日新聞社

 沖縄県名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票によって「反対」7割という民意が示された。この結果を受けて、玉城デニー知事は沖縄の将来像をどう描くのかをアエラに語った。

【写真】辺野古沖では、県民投票後も土砂投入が続いている

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 沖縄の民意に向き合おうとしない政府。玉城デニー沖縄県知事は沖縄の将来像として、「自治州的な一国二制度」がベストとの認識を示した。

「多くの県民が望むのは、政府から『これだけの財源と権限で沖縄の行政をしっかりやって下さい』と任される一国二制度です。沖縄の地理的優位性を生かして、アジアに向けた日本の玄関口、日本の中のアジアのフロントランナーとしての位置づけを明確にしたい」

 中国からも東南アジアからも近い沖縄を経済や文化交流の中心にする──。玉城知事はさらに続ける。

「例えば沖縄にいる自衛隊が、アジア各地の災害に真っ先に駆けつけるという存在になれば、諸外国から信頼と安心感を持って受け止められるでしょう。独特な歴史、文化、地理的特性をもっている沖縄だからこそ、一国二制度に移行すれば日本にとっても沖縄にとっても将来展望がより広がると思います」

 一方で、日本からの独立は全く頭にないという。

「我々はウチナーンチュであると同時に、日本人なのです」

 玉城知事は、安倍首相が繰り返す「沖縄に寄り添う」という言葉に、「ある人」を思い出さずにいられないという。

「お名前をここで出すのも気が引けるのですが、天皇陛下は皇太子のころから11回沖縄に来られ、ウチナーグチを習得されて、8・8・8・6の30音でつくられる琉歌で思いを詠まれてきました。そうした積み重ねの上に、沖縄県民に『心を寄せる』と発言されました。私は日本人として、『寄り添う』という言葉の深みを、安倍首相には心底お勉強してもらいたいと思います」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年3月11日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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