浪江に来て気づいたことがいくつもあった。丁寧な暮らし、人に対する気づかい、優しさ、たくましさ、弱さ……。訪問した時にさりげなく出してくれる漬物にも心配りを感じる。

「高級なお菓子より、その家のお母さんが漬けた白菜の漬物のほうが本当にうれしいし、『来てくれてありがとう』という気持ちが伝わります」

 仕事は1年ごとに契約更新。将来は?

「ぜ~んぜん、わかりません」

 とおどける。

 だが、住民たちの話を聴いた者としての責任はある。話してくれた言葉を大事に、次につながる取り組みを一つでも起こしていけたらと話す。

「この町を好きと思っている人たちと、一緒に町づくりができたらいいな」

 一歩一歩、「新住民」によって福島は前に進む。(編集部・野村昌二)

AERA 2019年3月4日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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