「ハックション!」。スギ花粉の飛散は2月下旬~4月上旬がピークだ(イラスト:kucci)
「ハックション!」。スギ花粉の飛散は2月下旬~4月上旬がピークだ(イラスト:kucci)

 注射数本で花粉症の症状を抑える。そんな夢のような治療法が、実用化間近だという。専門家に話を聞いた。

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 次世代の花粉症の治療法として注目されるのが「抗体療法」だ。

 スギ花粉の抗原が鼻の粘膜内に入ると、異物を認識する細胞が作用し、「スギ特異的IgE抗体」というスギ花粉にぴったり合う抗体が作られる。抗体が抗原をつかまえて結合することで、くしゃみや鼻水などといった症状の原因となる物質が放出される。

 この結合を妨げる薬剤を投与することでアレルギー反応を抑制するのが、抗体療法だ。日本医科大学の大久保公裕教授は言う。

「抗体治療は、数回の注射でシーズン中はほぼ症状を抑えられることが確認されています。アレルギー性ぜんそくの治療では既に保険適用されていますが、日本でアレルギー性鼻炎に対する抗体療法が実用化されれば世界初となります」

 既に臨床試験が終わっており、数年内に実用化の見込みだという。

 抗体療法の難点は治療費が高額なことだ。注射1本あたり6万~7万円で、将来的に保険適用されても1シーズンに数万円かかるとみられる。ただ、この記事を読んだ本誌編集長(50)は「花粉症に悩まされずに済むなら、それぐらい出しても惜しくない」とすでに前のめりだ。

 日本発の技術が花粉症を制する日は、そう遠くなさそうだ。(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年2月18日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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