「入試改革はアジア最低レベルの英語力しか身につかない日本の英語教育の転換を図る絶好の機会だったが、入試の公平性と整合性に問題が矮小化され、残念だ。民間試験を利用しないなら、効果的な代案を示す必要があるが、それもない。高校の調査書による評価では現状維持と同等で、代案とは言えない」

 さらに太田教授は、東大をはじめ、多くの大学が基準とする「CEFRのA2レベル」について、「アジア諸国の英語力と比較した場合、日本のトップ大学がそれでいいのか」と話す。A2は6段階中下位から2番目で、英検準2級相当だ。

「そもそもA2レベルに達しない生徒が東大を目指すことはありえない。日本の上位大学であればB1かB2(英検準1級相当)が妥当。A2はあくまで日本全体の最低基準。それ以上の成績を得た場合は加点などがなければ、受験生のモチベーションも下がるだろう」(太田教授)

 2年後に迫る入試改革だが、まだ動きは遅い。リクルート進学総研所長の小林浩さんは言う。

「共通テストの本格実装は、新学習指導要領で学んだ生徒たちが大学入試に挑む24年度。今は導入期と言えるでしょう」

 共通テストとは別に、各大学独自の入試改革は動き始めている。東大が16年に推薦入試を始めるなど、多角的評価が進む。

「例えば、お茶の水女子大学が16年度入試から始めた『図書館入試』。出された課題を図書館で調べて解決するなど、新学習指導要領で示された学力の3要素『知識・技能』『思考力・判断力・表現力』『主体性を持ってさまざまな人と協働して学ぶ態度』を問う入試に変わってきています」(小林さん)

 追手門学院大学は15年度入試から「アサーティブ入試」を始めた。この入試の出願には、事前に「アサーティブプログラム」への参加が必要だ。「何のために大学に行きたいのか」「将来どんな生き方がしたいのか」。個別面談を通じ、徹底的に自分自身と向き合うようにする。教務部アサーティブ課の志村知美課長はこう話す。

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