思えば、年越しが大失敗の分岐点だった。大晦日は刺し身やら寿司やらアヒージョやらで宴会をしてワインを赤白飲み、年越しそばを食べ、翌朝はおせちや雑煮をパクつき、勧められるまま日本酒を飲んだ。初詣で和菓子を食べ、甘酒を飲み、夜は再び宴会。2日はパンにアヒージョ、昼にはステーキ、花びら、新しいワインも開けちゃおう。ああ、食べるのに忙しい。この間、血糖値は餅とパンを食べた後にしばし150を超えたほかは、概ね140以下をキープしていた。

 明けて3日、おそるおそる体重計に乗る。ガーン、企画開始時より約2キロ増えている!

「食べ過ぎれば太りますよ」

 牧田医師のあきれ顔が目に浮かぶ。食事の写真を確認すると、一日に4度も5度も、腹いっぱい食べている。これでは、正月太りを実践しただけだ。

 仕方ない、秘策に頼ろう。運動はしたくないので、米国で活躍中の精神科医で『無理なくやせる“脳科学ダイエット”』の著者、久賀谷亮医師の提唱する「マインドフルネス・ダイエット」を実践することに。久賀谷医師にSOSを送り、丁寧に教えてもらう。

「年末年始明けに太るのは、食事量が増え、脳の報酬中枢がバランスを崩してしまったからです。あえて絶食する時間を半日でも作ってみてください。(1)空腹だから食べたいのか、(2)脳が食べたいから食べたいのか、違いがわかるようになりますよ」

 体の感覚、特に腹の感覚に注意を向けること。食前に30秒間、食事を眺めること。視覚、嗅覚、触覚など、五感を総動員して、よく味わって食べること。

「ズボラなのでなるべく簡単なやり方で」と恐る恐る申し出ると、釘を刺された。

「年末年始に太った脳には、ごちそう耐性ができています。放っておくとごちそうを求めるのが習慣になり、さらに体重が増えていく恐れがありますよ」

 それは困る。5日朝、久賀谷医師に言われた通り、食事前に30秒眺めていると、丼いっぱいの具だくさんスープに疑問を持った。鍋いっぱいに料理をつくり、毎食2杯は食べていた。「腹八分目の食事に適度な運動」、そんな基本を思い出す。

 痩せなかったけど、せめて正月太りだけでも解消したい。6日、もち麦をごはんに混ぜ始めた。体重は微減。増やすのは簡単だったのに……。週末、ホットヨガに行こうかな。悔しい。今度こそ結果を出すから、あと1週間待ってくれませんか。(編集部・澤志保)

AERA 2019年1月21日号より抜粋