美智子さまと詩 痛みと悲しみに心を向けられた…若き日のエピソード (3/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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美智子さまと詩 痛みと悲しみに心を向けられた…若き日のエピソード

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歌代幸子AERA#皇室
秋篠宮さま(左から2人目)の6歳の誕生日を前に、一家で絵本を囲んだ/1971年11月29日、東京・元赤坂の東宮御所で (c)朝日新聞社

秋篠宮さま(左から2人目)の6歳の誕生日を前に、一家で絵本を囲んだ/1971年11月29日、東京・元赤坂の東宮御所で (c)朝日新聞社

 その場で美智子さまは、ホフマンさんのためにと永瀬清子の詩「降りつむ」を読まれた。日本語とご自身の英訳(SNOW FALLS)の朗読は、憂愁をおびた美しさをたたえ、ホフマンさんは心を揺さぶられたという。

 永瀬清子は郷里岡山で農業に携わる生活のなかから言葉を紡いだ詩人。「降りつむ」は、終戦から3年後に発表された作品で、戦争で多くを失った喪失の深淵にある人々の悲しみと豪雪の静けさが重なり、そこからたちあらわれる生命の力強さが希望に向かう。

「戦争の荒地からふたたび生命がもえいづる希望に、多くの惨禍を現在も経験しなければならない人たちへの励ましと祈りを込めて、皇后さまは読まれたのだと思いました」と早川さん。

 この集まりで、俳優の吉永小百合さん(73)は原爆詩を朗読した。美智子さまの朗読に共鳴した吉永さんは、16年にカナダのバンクーバーで開かれた朗読会で原爆詩や福島の人々の詩とともに「降りつむ」を日本語で読んだ。このときピアノ伴奏をした坂本龍一さん(66)は、同じ舞台で披露されたこの詩の英語朗読に、長崎の原爆をテーマにした映画「母と暮せば」の自作曲を提供、翌年シアトルで平和活動を行う音楽団体が企画した音楽祭にも同様の朗読を提案した。美智子さまの英訳による「降りつむ(SNOW FALLS)」は、こうして世界に羽ばたいていく。

「皇后さまは詩をご自身で翻訳することを通して、言葉を越境させる営みに関わっておられる。そこに込められた思いや平和への願いを、世界の心ある人たちに伝えることをなさっているのですね」(早川さん)

(ノンフィクションライター・歌代幸子)

AERA 2019年1月21日号より抜粋


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