11月下旬、メキシコとの国境にある壁に鉄条網を設置する米海兵隊員たち。中南米から米国に向けて大挙してきた移民キャラバンを例に挙げ、トランプ大統領は広範囲にわたる国境の壁建設の必要性を訴えている (c)朝日新聞社
11月下旬、メキシコとの国境にある壁に鉄条網を設置する米海兵隊員たち。中南米から米国に向けて大挙してきた移民キャラバンを例に挙げ、トランプ大統領は広範囲にわたる国境の壁建設の必要性を訴えている (c)朝日新聞社

 連鎖する政府高官の辞意表明や予算案をめぐる対立、政府機関の一部閉鎖。マティス国防長官が辞表を出した12月20日以降も米政権を取り巻く混乱は続き、不安定さが際立つ中での年末となった。火種は自分自身なのに、率先して火に油を注ぐ言動を繰り返すトランプ大統領。火消し役不在の米国政治は、炎上したまま新年を迎える。

 クリスマス前最後の週末だった12月22、23両日、トランプ大統領はフロリダでの休暇を延期し、ワシントンにいた。大統領が望むメキシコ国境の壁建設費をめぐる議会での与野党調整が決裂し、期限内の可決ができなかった予算案の対応を強いられたためだ。クリスマス休暇に入った上下両院で次の審議は27日までなく、その間の予算は失効。国務省など一部の政府機関が閉鎖状態に追い込まれた。

 国境の壁のデザイン図まで投稿して壁建設の重要性を連日ツイートし、予算を通すよう議会に圧力をかけていた大統領だが、22日夜になって突然、思い出したようにマティス国防長官について書き込んだ。

「オバマ大統領に不名誉にも(中央軍司令官を)クビにされたジム・マティスに、私は再びチャンスを与えた。(中略)同盟国はとても重要だが、それは彼らが米国を利用しようとしない場合の話だ」

 マティス長官は20日に提出した辞表の中で、大統領に国際連携の重要性を説き、同盟国に敬意を示すよう訴えていた。

 このツイートの20分前には、長官の辞意表明につながったとされる米軍のシリア撤退についても大統領は言及。米兵を母国に戻す決断は通常なら評価されるのに、トランプ大統領だから批判されたとして、自身を「標的とするメディアのフェイクニュース」の問題だと強調した。

 トランプ政権に関する複数の書籍や分析記事によると、報道を極度に気にするトランプ大統領は、メディア中毒になっているという。主要テレビ局で政治討論などの報道番組がある週末は、すぐにツイートできるようパソコンをそばに置いたまま、可能な限り毎週見るらしい。マティス長官へのツイートが突然復活したのも、直前の番組で議論となったからだ。トランプ大統領は23日朝、2019年1月1日付でパトリック・シャナハン国防副長官を国防長官代行とする人事を発表。AFP通信によると、長官の辞表に関する報道に気分を害したと伝えられており、19年2月末だった長官の辞任時期を2カ月前倒しさせた。

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シリア撤退をめぐる週末のツイートは、もう一つあった