これまでは、海外原子力建設など、資本コストのかかる事業をやっていました。東芝には技術力がありますが、家電事業も価格競争力が落ち、必要な利益が確保できません。それらから撤退する判断をしています。

――東芝は11月、今後5年間の中期計画「東芝Nextプラン」を発表。数値目標の設定のほか、世界有数の「サイバー・フィジカル・システムテクノロジー」企業を目指すことを目標とする方向性を定めた。

車谷:GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)に代表されるサイバー企業は世界のデータを独占してビジネス展開していますが、そのデータのほとんどは、実世界である電力、流通、交通などの「フィジカル世界」から生まれています。サイバー企業のビジネスモデル競争は限界に達し、現実世界に踏み込もうとしています。

 ただ、例えば自動運転社会で勝つのはサイバー企業ではなく、自動車メーカーなどのフィジカル企業でしょう。実世界のデータをサイバー世界で分析し、社会システムを変革していく。これをサイバー・フィジカル・システムと言いますが、東芝を始め、フィジカルで最高の技術を持つ日本の製造業は有利な立場にあるでしょう。サイバー技術でも日本は世界トップクラスです。日本の製造業の復活に向けた新たな領域と言えます。そこを東芝は徹底的にやります。今後、すべての製品、社員のマインドセットを変えていきます。新生東芝の挑戦はこれからです。

(構成/編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年12月24日号より抜粋