車谷暢昭(くるまたに・のぶあき、60)/愛媛県出身。1980年、東京大学経済学部を卒業し、三井銀行(現・三井住友銀行)入行。英投資ファンド日本法人会長を経て、現職(撮影/写真部・大野洋介)
車谷暢昭(くるまたに・のぶあき、60)/愛媛県出身。1980年、東京大学経済学部を卒業し、三井銀行(現・三井住友銀行)入行。英投資ファンド日本法人会長を経て、現職(撮影/写真部・大野洋介)
11月、「東芝Nextプラン」の記者会見で車谷さんは「東芝のDNAは何か。ベンチャー型で発展したテクノロジー企業だ」と切り出した (c)朝日新聞社
11月、「東芝Nextプラン」の記者会見で車谷さんは「東芝のDNAは何か。ベンチャー型で発展したテクノロジー企業だ」と切り出した (c)朝日新聞社

 不正会計問題や原発事業の失敗など負の遺産は清算した。12月には新CMもスタートし、新しい門出をアピールする。東芝代表執行役会長CEOの車谷暢昭さん(60)が、“新生東芝”について語った。

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車谷:「正月にでも相談したいことがある」と、東芝社外取締役の小林喜光さん(三菱ケミカルホールディングス<HD>会長)から電話を受けたのは、2017年のクリスマス前です。私は金融の専門家で、たまに「今の金融政策を解説してほしい」と頼まれることがありました。

ところが、年明け1月4日に都内のホテルの一室に足を運ぶと、そこには小林さんだけではなく、東芝社長の綱川智さん、東芝の指名委員会委員長の池田弘一さん(アサヒグループHD相談役)の姿があり、驚きました。その場で「東芝の再建は日本の製造業の再建につながる意義のある仕事だ。再建は簡単ではないが、君に頼みたい」と、CEO(最高経営責任者)就任要請を受けました。

 すぐに「やります」とは言わず、「考えさせてください」と。やらなければならない仕事だと思いましたが、少しでも自分の中に迷いがあれば、受けてはいけないと思いました。誰かに相談したいというわけではなく、1日、2日、自分の中で熟慮する時間が必要でした。

――18年4月、不正会計問題をきっかけに経営危機に陥った東芝のトップに車谷暢昭・元三井住友銀行副頭取が就任した。東芝が外部から経営トップを招聘するのは53年ぶりで、車谷さんで4人目だ。前回は「メザシの土光さん」と呼ばれた石川島播磨重工業(当時)会長の土光敏夫さん。今回は銀行出身の車谷さんに白羽の矢が立った。

車谷:私が製造業出身じゃないことは当然、製造業の巨頭である小林さんも池田さんも重々わかっています。製造業自体が大きく変わっていくなか、逆にレガシーがない人がいいと思ったのではないでしょうか。私を信頼していただいた理由は具体的に話されませんでしたが、これまで逃げてこなかった部分を評価してくれたのかと思っています。

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