最終的には、「指導者が文句を言いたくなるのを我慢する」という状態ではなく、部員が自主的に動くので「文句を言う必要がない」という状況が生まれる。

「試合で円陣の外からアドバイスすると、部員がわかってるから言うなという感じで無視されたこともあるんです」

 と笑う。加えて、佐々木さんは言う。

「考えに賛同してくれるコーチやトレーナーら複数のスタッフがいるのも大きい」

 複数の大人の目が互いに、自主性を重んじているかをチェックできる。やりすぎ部活の要因の一つである、「部活を強くして大会で勝たなければ」という責任も分散するため、適正な判断ができる。

 11月に行われたラグビー全国大会県予選決勝のハーフタイム。佐々木さんは円陣に加わらず、部員だけで試合運びや修正点を考えた。そして快勝。3年ぶり5度目の花園出場を決めた。

 だが、“ホワイト部活”の実現を、先生たちの自助努力に任せるだけでは限界がある。

 アエラが今回、先生や親に実施したアンケートに寄せられた声を見ると、「部活動の成績による教員の評価をやめること」「親の過剰な寄付でつくる部活動の垂れ幕を禁止すること」「部活動の活動費をPTAなどに依存しないこと」など、先生の長時間労働や親の過熱を防ぐための仕組み作りなども大切だという意見が目立った。

 これらは、これまで筆者が部活動を取材してきて、「部活を不自由にする要素」と感じているものと重なる。部活に対する正しい認識が芽生え始めた今、変革を加速しなければならない。(ライター・島沢優子)

AERA 2018年12月10日号より抜粋