


AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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■いま観るシネマ
若松孝二監督が交通事故で亡くなって6年。「いつの間にか弟子になっていた」白石和彌監督がメガホンを取った「止められるか、俺たちを」が10月13日から公開される。1969年から2年半、若松プロダクションに飛び込んだおかっぱ頭の吉積めぐみ(門脇麦)を主人公に、師匠若松孝二(井浦新)と若松プロに集う若者たちの青春を描く。
白石監督によれば、映画のきっかけは2016年に行われた「若松孝二生誕80年祭」の特集上映だった。オープニングに若松プロ初期に集っていた足立正生や秋山道男、小水一男などレジェンドたちが登場。彼らが顔を輝かせて話す青春時代は無類に可笑しかった。その打ち上げで吉積めぐみの話を聞いた時、企画が動き出したと振り返る。
「めぐみさんが若松プロにきてから亡くなるまでの2年半は、作品で言っても奇跡のような時間。彼女を主人公にして、入った先におかしな大人たちがたくさんいた。そんな彼らが真剣な顔をして『世間を変えるんだ、俺たちは!』と言いながら女性の裸を撮っている。バカバカしくていいじゃないですか(笑)。これは映画になると思いました」
同時に、この映画を作ることで若松の「新しい声を聞けるのではないかと思った」と言う。「プッツリ亡くなった」若松への残された者たちからの返歌でもある。
映画制作で外せなかったのは、めぐみと若松のキャスティングだ。
「若松役は井浦新さんしかあり得なかった。『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』以降、若松さんは新さんがいたから映画を撮れたようなもの。一緒にいた時間も長い。絶対やってくれると思っていました。めぐみも最初から門脇さんしかいないと。60~70年代にいそうなアンニュイさを出せるのは彼女ならでは」