住宅ローンに限らず、自動車ローンや学資ローン等にも活用できるが、世帯年収が730万円未満であること、ローン返済額と新たに借りる家の家賃負担の総額が年収の40%以上になること、などの要件がある。

 ただし、あくまでガイドラインにすぎない点は留意しておきたい。債務整理をお願いしても、金融機関が応じなければ成立しない。16年の地震では8千棟以上が全壊したにもかかわらず、ガイドラインを活用した債務整理の成立件数は運用開始から約2年となる18年6月時点で258件にすぎない。

 このように、借り入れ負担の軽減策は限られているが、重要なのは金融機関と辛抱強く交渉することだという。

「東日本大震災の被災者で私のところに相談に来られた方は、職を失って住宅ローンが返済できず、自宅を手放したのに500万円の借金が残ってしまいました。ところが、その方は“私的整理”というかたちで、弁護士等を立てずに自ら借入先と交渉。月々の返済額を5千円に圧縮して、生活を立て直すことに成功しました」(高橋氏)

 住宅ローンに限れば、「災害保障」の特約が付いた住宅ローンも続々登場している。だが、「保障されるのは最大2~3年のローン返済額で、その保障された金額分はほとんどがあとから払い戻される仕組み」(清水氏)。被災直後に支払いそのものが免除される類いのものではない。自宅が全壊したときに最大300万円が支払われる被災者生活再建支援法に基づいた支援金も、申請から支払いまでには現状1~2カ月を要する。

 目先の生活資金を確保するためにも、最低限、地震保険には加入すること。生活に窮するようなら、ガイドラインに則った債務整理を検討するのがいいだろう。(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2018年10月1日号