実は被災者の金銭的負担を軽減できる手立ては限られている。生活設計塾クルー取締役でファイナンシャルプランナーの清水香氏は「事前の備えは、事実上、保険以外にない」と話す。

「風水害であれば火災保険でカバーできるケースが少なくありませんが、地震、噴火、津波の被害は地震保険でしかカバーできません。震災被害を受けても火災保険の半分の保険金が上限ですが、被災者の生活再建を手助けするための保険なので、保険金の支払いは請求して1週間程度と迅速です」

 とはいえ、被災時には可能な限り保険会社に電話することが重要だという。連絡が遅くなれば、損害調査がズレ込んで請求が遅れてしまうからだ。

「住宅ローンを組んでいる金融機関に返済猶予の申し出をすることもできます。災害救助法に適用された災害の被災者ならば、役所から発行された罹災証明書の提出などで被災者であることを証明すれば、金融機関は返済猶予などの貸し付け条件の変更に応じます」(清水氏)

 自動車ローンを抱えた愛車が被害を受けた場合も同様だ。仮に豪雨や高潮による水害で水没しても、通常の車両保険に加入していれば、補償を受けることが可能。だが、住宅と同じように、地震・津波・噴火によって愛車が被害を被った場合には「特約」を付けていない限り、補償されない。それも「全損した場合でも50万円程度の一時金しか支払われないのが一般的」(同)だ。特約は修理代を保障するものではなく、生活再建を目的とした補償にすぎないからだ。

 仮に被災で返済不能となった場合は、特定調停という方法もある。15年9月に起きた関東・東北豪雨災害以降の災害で利用できる「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を活用するのだ。

「債務整理の最終手段には破産手続きがありますが、免責決定までは一定の職に就けない、ローンが組めないなどのデメリットがある。これに対して、弁護士を立ててガイドラインに則った債務整理交渉を銀行と行えば、債務者に給付された被災者生活再建支援金や災害弔慰金、災害障害見舞金などを手元に残せるうえに、連帯保証人への請求がされず、債務免除を受けてもブラックリストに登録されないため新たな借り入れもできる」(住宅ローン問題支援ネット・高橋愛子氏)

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