2012年の九州北部豪雨で自宅が半壊し、買い直した自宅が16年の熊本地震で全壊した被災者は「地震保険は欠かせない」と話す(撮影/今村拓馬、イラスト/kucci)
2012年の九州北部豪雨で自宅が半壊し、買い直した自宅が16年の熊本地震で全壊した被災者は「地震保険は欠かせない」と話す(撮影/今村拓馬、イラスト/kucci)

 地震で自宅が倒壊し、失った家の住宅ローンの返済と、新しい住居費の負担が重くのしかかる被災者は多い。

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「住宅ローンの支払いと月々の家賃で約8万円の出費になります。手狭なのですぐにでも建て替えて引っ越したいところなんですけど、順番待ちの状況で今年も着工できそうにありません」

 こう話すのは本市内に住む30代の会社員の男性。2013年に2500万円で2世帯住宅を購入したが、その3年後の16年4月に熊本地震で被災。自宅は全壊した。

「地震保険に入っていたので1千万円近い保険金をもらったのですが、現金を残しておかないと不安だったので銀行に債務の減免をお願いしにいきました。しかし、支払い能力があるので一時的な返済猶予しか応じられないという回答でした」

 この男性は現在、民間事業者の賃貸住宅を仮設住宅とみなして自治体が家賃を補助する「みなし仮設」に父母と妻、子ども2人の計6人で住んでいるが、「自治体の補助が出る上限を超えているので月に3万円の家賃負担になっている」という。仮に来年、みなし仮設の更新を打ち切られれば、ローンの支払いを含めた月々の住居費負担は大幅に増える。銀行からは自宅を建て直す際には「優遇金利で」との言質を取っているため、早々に建て替えて引っ越せば住居費負担の増加を防げそうだが、いまだ復興道半ばの熊本市内では建設ラッシュが続いており、着工の目処は立っていない。

 同じく熊本地震で被災した男性(40代)が話す。

「自宅は賃貸でしたが、職業訓練学校の委託を受けたスクール経営のほうで1500万円ほどの借金があるんです。被災後も細々と経営を続けていますが、景気のいい建設・不動産業界にばかり人が流れてしまい、人が集まりません。売り上げが半減してしまったので、金融機関に返済負担を減らしてほしいとお願いに行ったのですが、『この先、あなたの会社に融資できなくなってしまいますよ?』と脅しめいたことを言われて……」

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