河合塾COSMO/1988年設立。東京校・名古屋校。担当のフェローと相談しながら、自分の目標とニーズに合わせて自分だけの時間割を作成できる(撮影/写真部・片山菜緒子)
河合塾COSMO/1988年設立。東京校・名古屋校。担当のフェローと相談しながら、自分の目標とニーズに合わせて自分だけの時間割を作成できる(撮影/写真部・片山菜緒子)

 生きづらさを抱えていても、必ず居場所はどこかにある。その場所でその大人に出会ったことで、運命が変わった。そんな現場を訪ねた。

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 女子中高生を対象にさまざまな支援を行うColabo代表の仁藤夢乃さん(28)を変えたのは、河合塾コスモでの講師との出会いだった。コスモは、高校中退・不登校から大学進学を目指す人などを対象にした予備校だ。高校卒業程度認定試験(高認、旧大学入学資格検定)に合格させ、大学進学まで指導する。

 仁藤さんは中高一貫女子校を中退、16歳でコスモに入塾した。コスモにはゼミやサークルがあるが、その一つ、毎週土曜日に畑で農作業をする「農園ゼミ」での故・阿蘇敏文さんとの出会いが大きかった。

「阿蘇さんは生徒を対等な存在として見てくれて、いくら対等と思っても対等になりきれないことも自覚して対面してくれた。阿蘇さんは正面から向き合うのじゃなくて、隣にいてくれて一緒に前を見てくれました」

 仁藤さんはコスモ講師やスタッフの勧めでAO入試を受け、明治学院大学に進学した。おかしいことがあった時に声を上げる、権利のために闘うことを教えてくれたことが、いまの仁藤さんの活動につながっている。 

 演出家・劇作家の大岡淳さん(48)は、本業のかたわらコスモで現代文・小論文の講師として元ヤンキーや不登校生など、個性豊かな生徒たちを指導してきた。初めて担当した女子生徒が小論文入試で東大に合格。自分の大学合格時よりうれしかった。

「コスモ生にはレールから外れたことを積極的に捉え返す生徒が多かったですね。僕がもらったものは計り知れないです」

 そんなコスモだが生徒層には変化があるという。河合塾コスモ事業部東京コスモチームチーフの平野稔さんは「設立当初は学校が合わない、規則で縛られるのがイヤという生徒さんが多かったですが、今は対人関係でつまずくなどして学校に通えなくなった生徒さんが多い。最近では、通信制高校に籍がある生徒さんも多くいます」と言う。

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