16年8月、連載を開始すると、小中学生のみならず、大学生や社会人からも、大きな反響が寄せられた。少年ジャンプの看板作品のひとつとなった現在も、杉田さんは、読者の反響チェックを欠かさない。

「週刊連載の醍醐味はライブ感。読者からの反響も巻き込んで、作品が動いていくんです」(同)

 子どもも大人も胸を躍らせる漫画は、こうして生まれる。

●娘が寝ている朝に描く

 電光石火の勢いで、ヒット作を生んだ漫画家がもう一人いる。橘オレコさん(30)は、「思い立ったら早い性質」。16年のある日、子育て以外にも何かできることをしようとアクリル絵の具を買いに行き、風景を描いた。

「しばらくしてツイッターを始めて、好きな漫画のイラストを描いたら反響があって。うれしくて、絵の具からイラストに切り替えたんです」(橘さん)

 イラストを描くのは楽しい。なんとか仕事にできないか。小学生の頃漫画を描いていたのを思い出し、同人誌を作った。同年10月、イラスト投稿サイトpixiv(ピクシブ)に投稿したオリジナル作品が、小学館マンガワン編集部の白水美咲さんの目に留まった。

 18年1月、『プロミス・シンデレラ』の連載を開始。アラサー女性と男子高校生をめぐる、「リアル人生ゲーム」は、ツイッターから人気に火がつき、瞬く間に人気作になった。現在、橘さんのツイッターのフォロワー数は、18万人を超える。

 橘さんのツイッターでは連載開始前から、「バツイチアラサー女子と男子高校生」というスピンオフが掲載されている。

「描きたくてついつい描いちゃった」と橘さんは笑う。

 仕事の時間は、夫と娘が寝ている朝4時から8時までと、午後は夫に幼稚園から戻った娘の面倒を見てもらい、正午すぎから18時まで。

「ネームの返信が待ちきれずにペン入れを進めたり。原稿も描きあげて10分もすると、尊敬する漫画と比べて、ダメだなあと思ってしまうんです」(同)

 早く描きたい、上達したい。そんな思いがツイートに溢れる。

「ふぅ、原稿楽しい」「山にこもって1カ月くらい模写に打ち込みたい」

 発信から伝わる熱量も、人を惹きつける。(編集部・澤志保)

AERA 2018年9月17日号より抜粋