「米国でも、糖尿病や肥満の助けになるのではと期待されていました。ところが、疫学調査をしてみると、カロリーゼロ飲料を飲んでいる人たちのそうしたリスクは解消せず、むしろ悪化している、という結果が出だしたのです」

ハーバード大学でライフスタイルや食生活と病気について疫学的に研究した、内科医の大西睦子医師は言う。

 太ったうえ、糖尿病が増える。人工甘味料のカロリーはゼロなのに、一体なぜか。

「要因は三つ考えられます。まず、人工甘味料がインスリンの分泌や血糖の調整に影響することが報告されています」(大西医師)

 すい臓から分泌されるインスリンは、余分なブドウ糖を脂肪に変える。大量に分泌されると、脂肪細胞がどんどん増えるため、肥満ホルモンともいわれる。つまり、人工甘味料は、代謝を狂わせる可能性があるという。

 もうひとつ、腸内細菌叢への影響も報告されている。疾患と腸内細菌叢の関係は近年、研究の発展が目覚ましい分野だ。

「14年、科学誌Natureに、人工甘味料が腸内細菌叢に影響を及ぼすという論文が発表されました。人工甘味料の摂取で、マウスとヒトの腸内細菌叢の組成のバランスが変わり、血糖値が上昇したのです」(同)

 カロリーゼロは魅惑的だが、

「私はおすすめしません」(同)

(編集部・澤志保)

AERA 2018年8月27日号より抜粋