宏池会OBに岸田氏の不出馬について電話で聞くと、「いまは何も言えない。察してください」と言葉少なに通話が切れた。

 石破派幹部の後藤田正純衆院議員はこう投げかける。

「安倍政権を見ていると、封建主義的な匂いがして、石破(茂)会長が求める政治とは比較軸の違いがはっきりしている。伝統的価値を求めるか、普遍的価値を求めるか。経済で言えば、デフレ脱却が先か、賃金上昇が先か。国民目線に近いのはどちらなのか。名門・宏池会はいつまで『安倍派』の下請けをやるのか」

 自民党OBも嘆く。

「安倍1強にひれ伏すしかなく、実に情けない。自民党に多様性があるなどと、笑わせる」

 自民党総裁選で現職首相が敗れたことは過去に1度しかなく、国会議員票を固めた安倍首相は盤石の状態と言える。

「安倍首相側の焦点は勝つことではなく、もはや勝ち方。2012年の総裁選で石破氏に地方票で完敗し、気の合わない石破氏を閣僚や党三役に起用せざるを得なかった」(永田町関係者)

 すでに財務省の文書改竄問題など、長期政権の弊害も出てきているが、安倍3選となれば任期は21年9月まで。満了すれば首相在任期間は戦前戦後を通じ歴代最長となる。柴山昌彦・党筆頭副幹事長はこう話す。

「長期政権になれば緊張感がなくなったり、ガバナンス上の根詰まりが出たりする。それをいかに払拭するか。ローテーション人事ではなく、実力のある若手を起用したり、政策についても見直しが必要なものは見直したりしていく。そうしなければ長期政権への不信感や飽き、国民の不満は払拭できないと思っています」

(編集部・澤田晃宏)

AERA 2018年8月13-20日合併号