ブラインドサッカー/日本ブラインドサッカー協会が開発した企業型研修。日本代表の寺西一さんのドリブルを間近で見た参加者は「スピードも正確性もすごい」(撮影/写真部・小山幸佑)
ブラインドサッカー/日本ブラインドサッカー協会が開発した企業型研修。日本代表の寺西一さんのドリブルを間近で見た参加者は「スピードも正確性もすごい」(撮影/写真部・小山幸佑)
ブラインドサッカーの研修。声だけで伝えるがうまくいかず笑いも起きた(撮影/写真部・小山幸佑)
ブラインドサッカーの研修。声だけで伝えるがうまくいかず笑いも起きた(撮影/写真部・小山幸佑)
ブラインドサッカーの研修。声だけで伝えるがうまくいかず笑いも起きた(撮影/写真部・小山幸佑)
ブラインドサッカーの研修。声だけで伝えるがうまくいかず笑いも起きた(撮影/写真部・小山幸佑)
ボールは転がると音が出る(撮影/写真部・小山幸佑)
ボールは転がると音が出る(撮影/写真部・小山幸佑)
研修後には「相手の立場に立って伝える」「積極的に声かけする」と“宣言”する参加者が目立った(撮影/写真部・小山幸佑)
研修後には「相手の立場に立って伝える」「積極的に声かけする」と“宣言”する参加者が目立った(撮影/写真部・小山幸佑)

 パラリンピックに興味はあるけどよくわからないというあなた。体験してみると、新しい世界が見えてきます。

【写真】転がると音が出るボール

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 6月下旬の金曜日の夜。名古屋市内のオフィス街の一角で、熱い戦いが繰り広げられていた。パラリンピック競技ボッチャの企業対抗戦「オフィス・デ・ボッチャ」だ。そろいのTシャツやジャンパーに身を包んだ会社員らが、一投ごとに歓声や悲鳴を上げる。

 決勝は前年の名古屋大会で準優勝だったアイシン精機と、2012年ロンドン・パラリンピックのボッチャ日本代表で脳性まひの加藤啓太さん(30)率いるKEI。1対1で迎えた延長戦。じゃんけんで先攻を取ったアイシン精機の永谷賢一さん(38)の投げた赤い球は、的となる白球の手前にピタリ。続く加藤さんの一投はわずかに及ばず、アイシン精機が制した。

 いま、障害のない人たちも一緒に障害者スポーツを楽しみ始めている。その筆頭がボッチャだ。名古屋で2度目の開催となったオフィス・デ・ボッチャには72の企業・団体が出場。予選リーグは3日間にわたり、観客を含めて約1千人が参加した。

 ボッチャは手や足にまひや機能障害のある比較的重度な障害者のために考案されたスポーツだ。冬季五輪競技のカーリングと似ていて、2チームが球を投げ合い、より的に近いほうが勝ちとなる。ただ、的となる「ジャックボール」の位置が固定されていないため、カーリングとひと味違う面白さがある。

 激しい運動はないが、知的な戦略と制球力、集中力が求められる。16年のリオ・パラリンピック団体では、日本代表はパラ初のメダルとなる銀メダルを獲得した。

 アイシン精機のチームリーダー、田中大介さん(53)は言う。

「ボッチャは緻密に戦略をたてて、そこへ正確にボールを制球するとても面白い競技です。それに、障害者の方が相手でも全く遠慮なく本気で戦い合えることも魅力だと思います」

 決勝で敗れた瞬間、とても悔しそうにしていた加藤さんだったが、内心はこれだけたくさんの人がボッチャに夢中になっている姿に感動していたという。

「17年前にボッチャに出合ったときからこの競技を社会に浸透させたいと思ってきました。こんなに多くの人が楽しんでプレーしていることがうれしい」

 オフィス・デ・ボッチャは、経済団体でつくる「オリンピック・パラリンピック等経済界協議会」が主催する。NEC東京オリンピック・パラリンピック推進本部の大庭未奈加さん(31)は言う。

「ボッチャは誰もが気軽に楽しめるスポーツです。それでいて戦略が鍵を握るため、仲間同士で話し合うことで、チームビルディングにも有効です」

 社内の会議室などで気軽にできるよう、ボッチャの正式なコートよりコンパクトな特別コートを使用。昨年7月に東京で開いたのを皮切りに、名古屋、仙台、福岡でも開催。各社1チームずつしか出場できないので、予選会を開いて出場する企業もある。

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